DDIポケットが参考出品した着せ替え式のPHS。
背面にコンパクトフラッシュ型のAirH"カードがささっている

 コンパクトフラッシュ(CF)型のPHSカードを差し替えれば,あっという間に機種交換できる――DDIポケットは,こんな新しいタイプのPHSを「WPC EXPO 2003」で参考出品している。無線部分と電話機部分を切り離すことによって,電話機部分を低価格化するとともに,さまざまなPHS利用法が広がることを狙う。

 今回,参考出品したのはオレンジ色の電話機(写真)。今年7月に他の展示会でも展示したが,そのときは使ってみることができない静態展示。今回は,実際に電話をかけることができる動態展示となった。背面にCF型のAirH"カードを差し込んで,通常のPHS電話機として使える。

 電子メールが着信したら,その旨,アイコンで通知させることもできる。この試作タイプではシンプルで低価格な製品を狙っているため,電子メールを表示させることはできない。AirH"カードをパソコンなどに差し替えて,表示させることになる。

 同社がこうした無線部分と電話機部分の切り離しで狙っているのは,PHS利用製品の多様化である。「これまでの携帯電話/PHSは30万台,40万台売れないと元が取れない」(DDIポケット 技術企画部サービス企画グループの石川俊司課長補佐)という。ところが,PHSの無線部はCF型カードに切り離し,操作部,表示部,電池だけを備えた電話機部分であれば,「低コストで製造できるので,1万台以下でもペイするようになる」(石川課長補佐)

 つまりニッチ市場に向けた製品を作りやすくなる,というわけだ。これまでPHSや携帯電話を作ったことがないメーカーも参入できるという。他社が,AirH"カードを用いた電話機を開発できるようにDDIポケットはインタフェース仕様を契約の上,無償で公開していく。

 今回,参考出品したようなシンプルで低価格な電話機のほかに,電話機型のPDA(携帯情報端末)も狙っている。PHSのCFカード,イヤホンを接続して,電話機として使えるPDAは東芝の「GENIO」のように製品としてあることはある。しかし,「電話機として設計されたものではないため,音質には限界がある」(石川課長補佐)

 電話機とPDAが一体になったものとして,米国ではすでに「スマートフォン」として製品化が始まっている(関連記事)。国内でも,AirH"カードをさす電話機タイプのPDAの登場をDDIポケットは期待している。それ以外にもDDIポケットはAirH"カードをデジタルカメラや家電,おもちゃなどにも接続して,ネットワーク機能を持たせることを構想している。

 こうした新しい方針によって,DDIポケットは,自らPHS電話機を売ることを止めてしまうのかというと,そうではないようだ。「電話機の強度や防水性,低消費電力といった点では,これまで電話機を作ってきたノウハウがある。そうした製品は今後も販売していく」(石川課長補佐)

(和田 英一=IT Pro)

 WPC EXPO 2003は日経BP社が主催するアジア最大のデジタル総合展。9月17日から20日までの4日間,千葉県の日本コンベンションセンター[幕張メッセ]で開催する。