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IP電話デモのネットワーク構成

 この10月にも固定電話からIP電話への発信ができるようになるコンシューマ向けIP電話サービス(関連記事)。日経BP社が9月17日から開催する「WPC EXPO 2003」では,大手インターネット接続事業者(ISP)9社が一同に会して,IP電話サービスを披露する。IP電話を実際に使ってみる,またとない機会となるだろう。

 IP電話サービスは,現在,第2フェーズまで来ていると言える。そして,現在できない固定電話からIP電話への発信が,今年10月にもできるようになる。

第1フェーズ 2001年4月~ Yahoo! BBが試験サービスを開始
第2フェーズ 2003年3月~ 大手ISPが商用サービスを続々と開始
第3フェーズ Xデイ(2003年10月?)~ 固定電話からIP電話への発信が可能に

 2003年10月にも,と言われている「Xデイ」を迎えると,050で始まる11ケタのIP電話専用番号を使って,固定電話からIP電話に対して電話をかけられるようになる。Xデイまで,それができないのは,NTTの交換機に050ではじまる番号を受け付けたときの処理が組み込まれていないからである。片方向の発信しかできなかったものが,ようやく双方向の発信ができるようになる。双方向ということで「Xデイ」と名付けてみた。

 今回のWPC EXPO 2003でのIP電話のデモはXデイを目前にしたものとなる。筆者は2003年2月に開催した展示会「NET&COM 2003」では「IP電話ISP間の相互通話体験コーナー」を企画・運営した。このときは第2ステージ直前,つまり商用サービス直前のデモだった。5社に参加していただいた。

 今回はその時の倍近い9社に協力していただくことができた。NEC,NTTコミュニケーションズ,KDDI,ソニーコミュニケーションネットワーク,ニフティ,日本テレコム,パワードコム,フュージョン・コミュニケーションズ,松下電器産業である。

 各ISPにバックボーンとなるIP電話基盤網を提供する通信事業者(キャリア)は,NTTコミュニケーションズ,KDDI,日本テレコム,パワードコム,フュージョン・コミュニケーションズ,ぷららネットワークスの6社である。

 同じISPが提供するIP電話サービスでも,IP電話基盤網を提供する通信事業者が異なると別のサービスとして提供されている。異なるIP電話サービスのユーザー間で通話するには,現在では,通信事業者がIP電話基盤網を相互接続する必要がある。しかし,相互接続ができているのは現在では,KDDI,日本テレコム,パワードコムの3社に留まっている。

 今回はNECとニフティが2つのIP電話サービスをデモする。NECはフュージョンとぷらら,ニフティはNTTコミュニケーションズとKDDIのIP電話基盤網を用いたサービスである。ところが,それぞれの通信事業者のIP電話基盤網は接続されていないため,同じISPのIP電話サービスであっても,相互に通話ができないのである。ちなみに,NECはこれらのサービス以外にもNTTコミュニケーションズおよびKDDIのIP電話基盤網を用いたサービスも提供している。

 こうした課題は,Xデイを迎えると,ひとまずは回避される。Xデイ以降は,050番号で発信しても,異なるサービスに対しては固定電話経由で通話すれば良い。ただし,その際には,IP電話同士は無料というわけにはいかず,固定→IP電話の3分10~12円と推測されている料金がかかってしまう。それを無料あるいは,より低価格にするためには,IP電話基盤網の相互接続がさらに進む必要がある。

 IP電話はこのように過渡期の状況にある。IP電話で今できること,できないことをパビリオンを訪れて,ご自身の目と耳とで確かめていただければと思う。

 そして利用者の立場からの意見を各ISP/通信事業者にぶつけてみよう。あなたの声で,第4フェーズ,すなわち通信事業者のIP電話網の相互接続が完了する日が早く訪れるようになるかもしれない。

(和田 英一=IT Pro)

 9社のIP電話を体験できるのは主催者企画コーナーの1つ「IP電話/ビジュアルコミュニケーションパビリオン」(5ホール)。WPC EXPO 2003は日本コンベンションセンター[幕張メッセ]で,9月20日まで開催する。