激動する世界情勢や経済、株価も含め見通し難い日本経済の中で、商社の経営環境に大きな影響を持つ為替相場についても不透明な状況が続いている。そうした中、輸出入を中核とする商社、あるいは流通・卸売業において、個社の成長戦略に向け活気に満ちたビジネスを展開している企業も多い。またリーマンショック以降続いてきた、企業における情報システム投資の抑制も緩和され、先の成長戦略に基づく課題解決やビジョン実現に向け、ビジネスの根幹を支える基幹システムの再構築に着手する企業も増加している。

 「総合商社における基幹システムの場合、商品カテゴリーやビジネスラインごとに商慣習も含めたビジネスロジックが異なっているため、別々の販売系情報システムが乱立しているケースも少なくありません。個別最適化されているともいえますが、現実問題として、財務戦略との融合も視野に入れた全社にまたがる経営戦略の実行や、ブランディング戦略を遂行するための全社横断的な施策を展開する際など、必要な情報を適時適切に収集できないといった構造的な悩みを嘆く経営者も極めて多いのです」とみずほ情報総研の太田智久氏は指摘する。

みずほ情報総研株式会社<br>法人ビジネス第1部<br>次長<br>太田 智久 氏
みずほ情報総研株式会社
法人ビジネス第1部 次長
太田 智久 氏

 一方、専門商社や卸売業の基幹システムは、貿易や運送に関わる諸掛の低減や費用の適性配分を目的としたコストの細分化や可視化といった旧来の改善課題が現在も大半を占める。「これはサプライチェーンを展開する流通事業における価値向上や差異化戦略の上で、コスト削減は永遠の課題であることにほかならないからです」(太田氏)。

 要するに、総合商社の基幹システムにおいては、自社のビジネス全体をポートフォリオとして捉え、選択と集中における事業のコア化促進と併せ、個別情報システムの統合による全体最適志向が求められている。専門商社や卸売業では、流通コストの低減に向け、間接コスト削減に資する貿易実務の省力化や直接原価の縮減コントロールを実現する原価統制機能の強化などが、基幹システム再構築の直接的な目的になることが多い。また輸出入においては為替予約のポジショニング管理など、キャッシュベースでの経営管理高度化といった要望も増えている。「これらが昨今の商社、流通・卸売業における基幹システム再構築に懸ける本質であり、そうした目的を実現する手段として多くの企業が改めて期待を寄せているのが、ERP(Enterprise Resource Planning)なのです」と太田氏は語る。

 もっとも、ERPを活用した基幹システムの再構築は、当然のことながら企業にとって決してたやすいものではない。

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