「クラウド時代のネットワーク最適化Forum 2017」で、ソリューション講演に登壇したインターネットイニシアティブ(IIJ)の林賢一郎氏は、複数のクラウドサービスを同時に利用するマルチクラウド環境の課題と解決策を解説した。

インターネットイニシアティブ サービスプロダクト事業部 副事業部長 林 賢一郎 氏
インターネットイニシアティブ サービスプロダクト事業部 副事業部長 林 賢一郎 氏
撮影:平瀬 拓

 同社が提供するクラウド基盤「IIJ GIO」のユーザー企業のうち、73%がほかのクラウドサービスを併用中といい、「企業システムにおいて、マルチクラウドは当たり前といってもよい時代になった」(林氏)。同時に、浮かび上がってきたのが、マルチクラウドならではの新たな課題である。

 林氏によると、「Office 365」を導入すると、さまざまな課題に遭遇するという。例えば、Office 365は一般のSaaSの3~4倍のセッションを張るため、プロキシーサーバーがボトルネックになることがある。

 Office 365のセッションだけ、プロキシーサーバーを経由せず直接通信させるように設定すればよいのだが、実はここにも課題がある。Office 365では、グローバルIPやFQDN(Fully Qualified Domain Name)が予告なく変わるのだ。

Office 365の経路振り分けを自動化

 こうした課題を解決するために、IIJでは「IIJクラウドプロキシ設定自動化ソリューション」を提供している。これを利用すれば、Office 365の経路振り分けを自動化できるので、プロキシーサーバーの運用負荷を回避できるという。

 また林氏は、「Office 365に含まれるビデオ会議サービスSkype for Businessを使い始めると、現場のユーザーから『映像品質が悪い、つながりにくい』といった声が上がる」と指摘する。これは、インターネット回線上で大きな遅延が起こっているためだ。

 この問題を解決するためには、マイクロソフトが「Azure」のメニューの一つとして提供している「ExpressRoute」を利用すればよい。これは、マイクロソフトのクラウドサービスへの閉域接続を実現する機能であり、IIJでも、この機能を「IIJクラウドエクスチェンジサービス」として提供中だ。

 林氏は、「マルチクラウド環境では、SaaSを利用する際にWANのトポロジーやルーティング経路といった構成のほか、機能強化や帯域の増減などを、柔軟に変えられることが重要な要件になる」と強調する。これを実現するのが、近年注目を集めている「SD-WAN(Software-Defined Wide Area Network)」だ。ソフトウエアで仮想的なWANを柔軟に構成できるようにする技術であり、IIJでも、SD-WANを適用した「IIJ Omnibus」というソリューションを提供している。

 マルチクラウド環境では、運用管理も煩雑になる。林氏は「クラウドサービスごとの差異を吸収して、運用管理を一元化することが効率化の鍵」と指摘する。これを実現するサービスとして、IIJでは「IIJ統合運用管理サービス」を提供している。オンプレミス(社内運用)とクラウドが混在したハイブリッドクラウドとマルチクラウドに対応したマネージドサービスである。「進化するクラウドテクノロジーに対応したサービスをいち早く提供したい」と述べ、林氏は講演を締めくくった。

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