ユーザー企業でデジタルマーケティング、そしてABM(アカウントベースドマーケティング)に携わる中東孝夫氏(KDDI)と関口昭如氏(ルネサスエレクトロニクス)に、対談形式で日本のデジタルマーケティングに関わる「ユーザー企業の取り組み」を聞く本連載は、今回が最終回となる。
今回は、国や地域によって大きく異なる顧客データ整備の問題から始まり、コンテンツ制作やインサイドセールスなど、専門知識を持つパートナーとの関係構築へと話が展開した。対談の結論として、業種業態が異なっても共通する三つの重要事項が見えてきた。
ITproマーケティングの別の対談で、「MA(マーケティングオートメーション)とはリードを絞るものだ」というコメントがありました。この対談の第2回で話があったように、最初にコストをかけて顧客データを定義してから、不要なリードを絞っていくともったいないようにも思います。どう考えるのがよいのでしょう。
中東:現状のMAはまさに、お客様をフィルタリングするためのツールです。しかしお客様のWebサイト上でのビヘイビアだけで絞り込みをするのは難しいと考えています。
ビヘイビアからは、「商品やサービスを今、欲しい」といった時間的な変化は分かるかもしれませんが、その人の購入に関わるポテンシャルは出てこないと思います。MAを使ってビヘイビアでフィルタリングする前に、ポテンシャルでフィルタリングしておいた方が使えると考えています。
最初からお客様を絞り込んでおくと、反応していない、つまりビヘイビアが足りないお客様が見えてきます。そこで、そのお客様にもう一度メールを送るのか、それとも営業に行かせるのかを考えられます。
ビヘイビアによるフィルタリングが先行すると、反応しないお客様には営業に行かせないとなって、逆に機会損失が多くなると思います。反応しないけど、営業に行かせたいお客様をピックアップするとか、そういうアプローチも大事だと思っています。
関口:難しいですが、8~9割は賛成します。こういうスタンスの方が営業と目標を握りやすくなりますし、コンバージョン率は最終的に上がります。お客様にも余計なメールが届かなくなるし、いいことがたくさんあります。
ただ、日本以外のリージョンとかを見ていると、誰がターゲットだか分からないケースがどうしてもあります。こうした地域では、全部をアカウントベースでやらないといけない、というわけではないと思います。
中東:おっしゃる通りですね。国によってデータの整備状況が全然違いますね。