IT現場で働き方改革を進めるときは、まず必須ではない業務や作業をやめて時間の余裕を作り、次に必要な業務・作業の所要時間を可視化する。所要時間を可視化した業務・作業の中には、人手では改善しにくいものもあるだろう。そんなときはITツールで自動化できないかを検討しよう。
作業テストの自動化などに取り組むIT現場は以前からあるが、最近は人工知能(AI)などの技術が進化したことによって自動化の対象が以前よりも広がっている。
社内の問い合わせをAIが応答
「PCの動作が不安定」「社内システムにログインできない」――。ユーザー企業のIT部門には、利用部門から日々問い合わせが押し寄せる。問い合わせを減らすために社内ポータルサイトにFAQのページを用意しても、利用部門が回答のページにたどり着けず、結局問い合わせてくることも少なくない。
こんな状況をAIで解消できる可能性が開けてきた。サッポロホールディングスの事例が参考になる。
同社グループの間接部門機能を担うサッポログループマネジメントの河本英則グループIT統括部 営業情報グループ 課長代理らのチームは2017年11月、野村総合研究所のAIシステム「TRAINA(トレイナ)」の運用を開始した。それまでIT部門が人手で応対していた問い合わせの一部をTRAINAで代替する。
TRAINAのAIチャットボットやデータ検索機能などを活用。これらとサッポログループマネジメントが運用するFAQシステムのデータを組み合わせ、問い合わせ内容に適した回答をAIチャットボット経由で利用部門に案内する。人手で回答を探し出す時間を削減し、IT部門の働き方改革につなげる。利用部門にとっても、回答を得る時間の短縮が見込める。
2018年1月末時点では、サッポログループマネジメント社内に限定して運用中だ。問い合わせの20~30%程度に対し、人手を介さずAIチャットボットが適切な回答を案内する効果を得ている。
河本氏は、「今後はさらに効果を高められる」と自信を見せる。利用部門がAIシステムに問い合わせた内容を分析し、既に改善のポイントを見つけているためだ。
ポイントの1つは、社内規定に記載されているような基本的な内容をFAQシステムに追加すること。AIシステムを稼働させる前であれば、利用部門はこうした基本的な内容をIT部門にわざわざ問い合わせなかった。このため、FAQシステムにも回答を用意していなかった。こうした情報もFAQに載せれば、自動で回答できる比率が高まる。
ChatOpsで自動化を手軽に扱う
新規システムの開発案件では、既存業務などのしがらみが少ない分、利用できるツールの自由度が高いことが多い。使い勝手に優れたツールで自動化の環境を整備しやすい。
参考にしたいのは、アクセンチュアの土橋祥二テクノロジーアーキテクチャグループ シニア・マネジャーらのチームだ。チャットツールをベースに開発・運用プロセスを回す「ChatOps」を取り入れている。