2016年7月27日に東京・目黒で開催された「ITインフラSummit 2016夏」。本稿では、インフラ活用の先進ユーザーや、インフラ関連ベンダーの専門家による多数の講演のうち、ネットワーク基盤に関するものを中心にレビューする。

 特別講演では、日立建機がCADワークステーションのVDI化に取り組んで得た知見を披露。続くソリューション講演では、リバーベッドテクノロジーが最新のソリューションとその活用法を解説した。

特別講演:日立建機
CADワークステーションVDI化の取り組みで会得した、効果的活用の知恵

日立建機 開発支援センタBOM・CAD推進部技師 田端 聡氏
日立建機 開発支援センタBOM・CAD推進部技師 田端 聡氏

 ユーザー事例を紹介する特別講演の1コマに、日立建機の田端聡氏が登壇。CADワークステーションをVDI化した経緯と、そのメリットを説明した。同社は建設機械の設計に3D CADを活用してきたが、2013年以降は、3D CAD端末を、それまでのワークステーションからVDI(デスクトップ仮想化)環境へと移行している。

 以前の日立建機は、全設計者の半数に当たるワークステーションを用意し、これを専用のCADスペースに設置していた。設計者は、自席からCADスペースへと移動し、CADスペースの空いているワークステーションを利用していた。

 ところが、設計者が増えるに連れてCADスペースが足りなくなった。仕方なく、一部のワークステーションを設計者の自席に置くようになった。その結果、ワークステーションの台数がいたずらに増え、部署によっては1人1台体制になっているところもあるという状況だった。

 器材を共用化するメリットは、稼働率が高まること。デメリットは、共用の機材を設置する専用スペースが必要になることだ。1人1台のワークステーションを自席に置けば専用スペースは必要ないが、著しく稼働効率が落ちる。

 自席で使えて、さらに共有化による稼働率の高さも実現する。これを実現するための方法が、VDIによる遠隔操作だった。2013年、同社は仮想マシンを遠隔操作するシステムを導入した。ラックマウント型サーバー(8コア)とHyper-Vを組み合わせ、CADワークステーション代わりとなる10台の仮想マシンの運用を始めた。

GPUが使えるVDIを導入し、ワークステーションを代替

 そのうち現場から、「ワークステーション並みのGPU性能が必要なヘビーな処理も、遠隔操作でできるようにしてほしい」という要望が上がるようになった。2013年後半には、VDIサーバーに接続したGPUカードを複数の仮想マシンで共有する仕組みが登場していたので、これを利用することにした。

 
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 ログインしっ放しになることを防ぐため、XenDesktopのポリシーでログイン後12時間で強制ログオフさせるよう設定した。また、ネットワーク帯域を節約するため、デスクトップ画質を最大1Mビット/秒程度とし、データ転送時にはデータ圧縮を強制する設定も施した。

 VDIの導入によって使い勝手も上がり、CADの画面からローカル端末に画像を取り込むことも簡単になった。「3年後にはWindows 10を導入する。CADソフトもバージョンアップする。これらを数百台の物理ワークステーションに適用すると工数が膨大なので、すべてVDIにしてしまいたい」(田端氏)。

 2015年に入ってからは、ネットワークおよびストレージ環境を改善した。新たにスイッチを導入し、CADソフトを動作させたVDIサーバーと、3Dデータを収めたCAD関連サーバー群を、同一のスイッチを使って10Gビット/秒でつないだ。ストレージには、VDIと好相性の重複排除機能を備えたオールフラッシュ製品「NetApp FAS2552」(1.6Tバイト)を導入した。

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