人工知能(AI)ブームにわく日本だが、IT大手企業が主導する米国との差は大きい。その中で、日本でのAI研究のハブとして期待を集める組織がある。2015年5月に発足した、産業技術総合研究所の人工知能研究センターだ。センター長の辻井氏は、AI技術を製造、流通などの領域と連携させる研究体制の確立に挑む。

人工知能研究センターが発足して、約1年経ちました。今、AI研究でどのような役割を担っていますか。

辻井 潤一(つじい・じゅんいち)氏<br>1973年京都大学大学院修士課程修了。京都大学助教授、マンチェスター科学技術大学 教授、東京大学教授、マイクロソフト研究所アジア首席研究員を経て、2015年5月から現職。2005年よりマンチェスター大学教授を兼任。計算言語学会、国際機械翻訳協会、アジア言語処理学会連合、言語処理学会などの会長を歴任。国際計算言語学委員会現会長。(写真:陶山 勉)
辻井 潤一(つじい・じゅんいち)氏
1973年京都大学大学院修士課程修了。京都大学助教授、マンチェスター科学技術大学 教授、東京大学教授、マイクロソフト研究所アジア首席研究員を経て、2015年5月から現職。2005年よりマンチェスター大学教授を兼任。計算言語学会、国際機械翻訳協会、アジア言語処理学会連合、言語処理学会などの会長を歴任。国際計算言語学委員会現会長。(写真:陶山 勉)

 目指しているのは、国内のAI研究でのフォーカルポイント、つまり皆が期待を寄せて自発的に集まる「焦点」になることです。

 これまでAI研究をリードしてきたのは、主に米国の大手IT企業でした。資本や技術者、データを一手に集め、データから価値を引き出す目的で研究を進める。グーグルやマイクロソフトの検索エンジン、アマゾン・ドット・コムのレコメンドシステムが典型的な成功モデルです。

 これに対し、日本ではデータを持つ企業と技術を持つ企業がバラバラで、力を結集できていません。技術を持つITベンダーはいますが、自らデータを収集し、価値を引き出すには至りませんでした。

 我々は市場ニーズを捉えて、バラバラになっている技術とデータをうまく統合し、新たなAI研究のモデルを構築することを狙っています。

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