現在、無線LAN規格の主流といえば、IEEE 802.11acだろう。対応製品は2013年春頃ごろから登場してきたが、2015年後半あたりから当初の製品より高速で、多機能な新世代の製品が出てきている。これらは「IEEE 802.11ac(Wave2)対応」と呼ばれることがある。
Wave2は正式な規格ではない
IEEEの公式文書には「Wave1」「Wave2」といった文言は含まれていない。業界における便宜的な呼び方として使われてきた。そのため、公式な文書などは存在せず、どこまでをWave2の仕様とするかは曖昧な部分がある。本稿では、IEEE 802.11acの規格上限をWave2として判断して扱う。
IEEEによる11acの正式な標準化は2014年1月だが、対応製品はそれより早い2013年からドラフト仕様の段階で登場していた。これらの製品や当時の仕様が「Wave1」と呼ばれる。
当時より第2世代として「Wave2」の存在は明らかにされており、Wave1の仕様に160MHzや80+80MHzのチャンネル幅、最大8つの空間ストリーム、MU-MIMOのサポートなどを加えたものがこれに当たる。
IEEE 802.11nやWave1世代の製品がそうであったように、実際に対応するストリーム数や最大通信速度などは製品によって異なる。製品レベルではWave2世代の仕様であっても「Wave2」という言葉は使われていないことが多い。
11n | 11ac(Wave1) | 11ac(Wave2) | |
---|---|---|---|
周波数帯 | 2.4GHz/5GHz帯 | 5GHz帯 | 5GHz帯 |
最大伝送速度 | 600Mbps | 1.3Gbps | 6.93Gbps |
変調方式 | OFDM | OFDM | OFDM |
サブキャリア変調方式 | 64QAM | 256QAM | 256QAM |
最大フレームサイズ | 64KB | 1MB | 1MB |
チャンネル幅 | 20/40MHz | 20/40/80MHz | 20/40/80 /80+80/160MHz |
最大空間ストリーム | 4 | 3 | 8 |
MIMO | シングルユーザー (SU-MIMO) | シングルユーザー (SU-MIMO) | マルチユーザー (MU-MIMO) |
最大チャンネル幅と最大空間ストリーム数が拡大
IEEE 802.11ac(Wave 2)世代の大きな強化点が、チャンネルボンディングにおけるチャンネル幅の拡大とMIMO(Multi-Input Multi-Output)のストリーム数の増加だ。
チャンネル幅は、電波の通り道のことである。電気信号ベースのインタフェースでいえば、バス幅に相当する。理論上、通信速度はチャンネル幅に比例して向上する。