研究者同士の交流を促すことが、イノベーションの創出につながる─。こうした考えから、分散していた研究所を統合し、様々な知見を持つ研究開発担当者を「協働」させる企業が増えている。コミュニケーションが生まれ、化学反応を起こしやすくするためにどんな仕掛けが必要なのか。3社の研究開発オフィスで探った。
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長い廊下に沿って、白く冷たい研究室の扉が並ぶ─。新研究開発棟「コニカミノルタ八王子SKT」はそんな従来のイメージを覆す。
天井をガラス窓で覆った大空間のアトリウム。階段やキューブが張り出し、手すりを植栽の緑が彩る。ラグジュアリーホテルのような空間だ。
SKTは、カタログやポスターなど商業印刷向けの大型デジタルプロダクションプリンターの研究開発拠点だ。国内外のデジタル印刷機市場で大きなシェアを持つコニカミノルタは、オンデマンド印刷チェーンのキンコーズ・ジャパンを買収するなどして商業印刷サービスを拡充。一方で、プロダクションプリンターの新製品開発の効率向上も図ってきた。
その切り札が2014年に新設したSKTだ。従来は八王子の拠点敷地内に開発部署が分散していた。「それらを集約してシナジーを生み出し、研究開発力の向上を図った」と、コニカミノルタの白勢明三開発本部開発副本部長は説明する。現在は1400人の研究開発担当者がこの建物で働く。
7階建てのSKTのうち、3階から7階までのフロアを冒頭のアトリウムが貫く。3階部分は「知の泉」と呼ぶ広間だ。新製品の開発工程の節目で、数十人の研究開発担当者が一堂に会し、新製品開発レビュー会を開く。レビュー会がないときは、雑談の場となる。コーヒーを楽しめる「オフィスコンビニ」や、リクライニングチェアを置くエリアなど、社員がくつろげるスペースも多い。
研究開発担当者同士がコミュニケーションを取りやすくする仕掛けも随所に作り込んだ。執務フロアには議論に集中しやすい「ファミレス席」や、研究開発担当者が集まって付せんを使ってアイデアを出し合える「クリエイティブパオ」などがある。アトリウムにも、手すり部分に設けた木製カウンターや、空中に突き出したキューブ型会議室「パーゴラ」もあり、様々な場を選べる。