IoT Asia 2016の紹介も今回で4回目です。これまでの記事は次の通りです。

[第1回]キーノート
[第2回]データ解析・工業系IoT
[第3回]アプリケーションデザイン・ウエアラブル

 今回はスマートシティのセッションについて紹介します。スマートシティはIoT Asia 2016の中でも最も大きなトピックとなっているようで、一番大きな会場が割り当てられています。スマートシティを実現するためには企業だけでなく、国や自治体、市民団体などの協力が欠かせません。それだけに力を入れているのでしょう。

センサー情報によるスマートシティのメンテナンス

写真1●Alicia Asin氏
写真1●Alicia Asin氏
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 まず最初はAlicia Asin氏、スペインのLibelium社による発表です。Libelium社はセンサーネットワークボックスやクラウドに接続するためのゲートウエイボックスを販売しています。言わばIoT用のセットトップボックスを販売している企業です。

 まず生活するとは何なのかについて説明がありました。市民は生活する中で常に学び続けており、リアルタイムに欲求、興味が変化するものであるとしています。そしてスマートシティに最も近い環境におり、スマートシティによって深く影響を受ける人たちです。

 そして、スマートシティの提供するサービスによって生活がどう変化するかを紹介しています。例えば電気や道路、街路樹などのメンテナンス時期が容易に判断できるようになり、低コストでメンテナンスできるようになるでしょう。それらはセンサーからもたらされるデータと分析によって実現します。

 キーになるのが相互運用性です。様々な種類のセンサー、プロトコル、クラウドプラットフォームが選択肢になります。Libeliumのデバイスはそれぞれに対応しているようです(写真2)。この多様性のおかげで、プロジェクトごとに要求される仕様に合わせて選定が自由にできるようになります。

写真2●デバイスの多様性
写真2●デバイスの多様性
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 ここから実際にセンサーデータを収集するデバイスの紹介がありました。主に電柱や壁に取り付けるデバイスで、ゲートウエイとして動作します(写真3)。センサーからのデータを集計したうえで、モバイルネットワークを通じてクラウドにデータをアップロードします。この時問題になるのがデバイスの設置やメンテナンス問題で、当然ながら誰もあえて電柱や壁を登ってメンテナンスなどしたくないと考えるそうです。そのため、デバイスの信頼性や屋外ということを考慮しても十分な堅牢性があるデバイスになっていなければなりません。

写真3●Libelium社のデバイス
写真3●Libelium社のデバイス
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 センサーの例として、道路の脇にある駐車場に設置するものを紹介しました(写真4)。駐車場が空いているかどうかをセンサーで通知します。こうしたセンサーは車で踏まれるため、十分な強度を備える必要があります。そのうえで車の運転を阻害しない大きさになっていなければなりません。屋外でのIoTは環境が良くないケースが多いのが注意点だそうです。センサーはもちろん、ゲートウエイにも車の排気ガスへの耐性が必要です。

写真4●駐車場監視の例
写真4●駐車場監視の例
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 センサーはいずれも小さなものばかりですが、メンテナンスの手間を省き、壊れないようにするため、正確性(安定性)や製品品質にこだわるべきで、特に屋外のIoTにおいては大事な要件になってくるでしょう。その他の例として、屋外のゴミ箱内に設置して監視したり、下水道のコントロールをするデバイスを紹介していました。いずれも過酷な環境にあって、安定した動作を継続するためには製品の品質に十分な考慮が必要なのが分かるでしょう。

写真5●ゴミ箱や下水道監視の例
写真5●ゴミ箱や下水道監視の例
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 スマートシティを実現するためには現状の環境を十分に考慮したうえで、メンテナンスしやすいように設計する必要があります。一般的にコンピュータやスマートデバイスが置かれている環境よりもずっと粗悪な状態にあり続けるというのが基本と考えるべきでしょう。

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