ITproマーケティングが開催した「BtoBセールス&マーケティング Summit SPRING 2016」で、ハンモック 企画部 営業戦略課 中川 淳氏は、初めてマーケティングオートメーション(MA)に取り組む際の注意ポイントを解説した。「国内BtoB企業にマッチした“マーケティングオートメーション”の導入ノウハウ」と題した講演の中で、企業がマーケティングと営業の連携に取り組む中、MAツール活用の難しさを踏まえた上で、使いこなすための三つのノウハウを披露した。
日本企業がMAツールを使いこなす難しさ
「米国で生まれたMAを、日本企業が、日本のBtoB市場で活用する場合には難しい点がある」――。日本特有の課題から中川氏は話し始めた。
日本でも米国でも、MAの役割は優良な見込み客であるホットリードを発掘することに違いはない。そのためのプロセスを自動化するものがMAツールである。リードに合わせて最適なメールマガジンを配信したり、Webのアクセスを分析し誘導したりするものだ。そしてマーケティング担当者は、発掘したリードに対し設定したシナリオに基づいてアプローチし、ホットリードになった時点で営業に渡す。
しかし日本企業のマーケティング部門の体制や役割は、米国とは異なる。米国のMAツールをそのまま持ち込んだ場合、担当者の負担が大きい、あるいは期待した効果が出ないといったケースが散見される。
リードのデータベースの質にも問題はある。集めたリードに対しては、優良顧客へ育成するためのナーチャリング活動をするが、入力漏れによって不完全なデータベースを作るのは望ましくない。
「集めた名刺が、営業担当者の机の引き出しに死蔵されている状況もある。顧客リストが散在したままででは、リードデータベースの数も増えないし、質も高まらない」と中川氏は言う。
マーケティング部門と営業部門間の温度差も大きい。マーケティング部門が集めたリードを営業部門に渡しても、「営業部門は、そのお客様にアプローチしてくれない」「マーケティング部門が送ってきたリードの質が低い」など、双方がギャップを抱える事態が、多くの会社で起こっている。
「実はマーケティングだけを自動化しても、成果につながりにくい。両部門の温度差をどうやって埋めるのかが、MA成功のためのポイントとなる」と中川氏は指摘した。
そしてMAツールを初めて導入しようという企業に、「(1)MAの専任担当者をつけず、兼任でも継続できる仕組み、(2)抜けがなく、精度が高いリードデータベースの整備、(3)マーケティング部門と営業部門の温度差を埋める仕組み――という三つのポイントを抑えることが重要」とした。
MAツールをうまく使いこなす、三つのノウハウ
中川氏は、ハンモック社内で実践して効果を上げた、MAツール活用の取り組みを披露した。
一つめは、漏れなくリードのデータベースに登録するため、名刺の回収率を100%にまで高める仕組みだ。「リードを獲得するのはマーケティング部門や営業支援部門の仕事。その部門が持っている名刺などを集約するのは難しくない。しかしリードのもとになる名刺は、営業部門も持っている。それらを全て集約するのは、現実的に非常に難しい」(中川氏)