プログラム自動生成で、超高速開発は開発手法に革新をもたらすが、全てを自動化できるわけではない。誤ったツールでは成果は上がらないし、使いこなす人材も重要だ。ITベンダー交代の決断が必要になこともある。

 大手の採用が広がる超高速開発だが、現時点ではまだ誰が使っても「銀の弾丸」になるものではない。判断を間違えれば、コストをかけたにもかかわらず成果が上がらない、最悪の場合にはプロジェクト自体が中断に追い込まれるケースもあり得る。

 真の超高速開発を実現させるためには、慎重かつ真剣に、適切にツールと人材、ITベンダーの三者を選ぶプロセスが必要だ。

[焦点1]ツールの選定ミスは致命傷 手間惜しまず徹底比較を

 当然だが、自社に最適な超高速開発ツールを選ばなければ期待した成果は生まれない。日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)とICT経営パートナーズ協会の調査によると、今や40種類近くのツールが市場に出回る(表1)。目利きが試される。

表1 日本情報システム・ユーザー協会による超高速開発ツールの一覧
ツールの選択肢は膨大、見極めが大切
表1 日本情報システム・ユーザー協会による超高速開発ツールの一覧
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 超高速開発のユーザーはツールにロックインされ、ツール間でリポジトリ―の互換性はない。必ずしも全ての工程を自動化できるとも限らないし、それぞれに性能面の限界が存在する。業種・業態や業務スタイルによる得手不得手があることも見逃せない。

 選択を間違えれば、システム規模や利用形態、開発スタイルに合わないツールに縛られるだけだ。「自動生成するのは業務プログラムだけか、画面やデータベースも必要か」「設計やテストも自動化したいか」「リポジトリーは必要か」「バッチ処理は必要か」「利用者は何人か」「ほかのシステムとどう連携するか」――。

 どんなシステムを作りたいのかを明確にした上で、自社の要望に合うツールを探し出す。安ければ数十万円から利用できるが、価格もさまざまだ。投資が無駄にならないよう、道具選びには慎重になるべきだ。

 パナソニックの坂元氏は、部下2人と共に3カ月をかけ、候補を3種のツールに絞った。開発元やITベンダー、導入ユーザーに足を運び、「悪いところを本音で教えてほしい」と尋ね、生の声に耳を傾けた。

 2014年12月に営業支援や試験学習などのiPadアプリを開発した不動産販売のボルテックスは、iPadアプリを生成できるかを重視してGeneXusを選んだ。内製に向け超高速開発を検討したが、まずは経営層に分かりやすくツールの威力をアピールするにはiPadアプリが適していたという。予算を確保し、2015年1月から開発会社のコアネクストと協力し、順次、部門システムを再構築している。

 保険の約款チェックや携帯電話の料金計算のような業務システムで使うなら、BRMSが適している。定期的に変更が入る上に条件が複雑な業務を進める際に守るべき規定や約束ごとを「もし…ならば~せよ」という形で表せるためだ。複雑な入れ子になったルールが入力しやすいので、保守がしやすくなる。

 ツールは一度導入すると何年も使うのが一般的。海外やベンチャー企業の製品を採用する場合は、バグや問い合わせ対応を含め、中長期にわたって使い続けられるかどうかが評価のポイントになる。

 ある自治体は、ツールのバグが解消できずプロジェクト自体が中断した。関係者は「開発途中でデータ量がツールの限界を超えることが判明した。ツールの改善を申し入れたが修正してもらえなかった」という。

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