2015年7月28日に開催された「ITインフラSummit 2015 夏」から、運用管理基盤にかかわる話題として、プロセスとツールの両面から運用管理の改革に取り組んだリクルートテクノロジーズによるユーザー講演のほか、ServiceNow Japan、ソーラーウインズ・ジャパン、ヴイエムウェアのベンダー3社の講演内容を報告する。
特別講演:リクルートテクノロジーズ
IT資源を共通プール化し無駄を排除、パブリッククラウドも混在管理
リクナビやじゃらん、ホットペッパーなど多様なWebサービスを展開するリクルートグループ。講演では、これらのITシステム基盤を支えているリクルートテクノロジーズの北岡史也氏が登壇し、2009年から運営しているプライベートクラウド「RAFTEL」における工夫点を解説した。
ITインフラをプライベートクラウドのRAFTELに統合する以前の2006年から2007年頃にかけて、リクルートグループは大きな課題を抱えていたと北岡氏は振り返る。複数のWebサービスをバラバラに管理していたこと、新サービスの立ち上げ時に人件費がかさんでいたこと、ビジネスの立ち上げスピードにITインフラが追いついていなかったこと、である。
1番めの課題は、個別最適化の問題である。データセンターごとにハードウエアのベンダーが異なっていたほか、使っていないITリソースがたくさん余っていた。こうした無駄を排除するため、データセンターを統合し、リソース(サーバー、ネットワーク、ストレージ)の標準化を図り、共有プール化した。
2番めの課題、新サービス立ち上げ時の人件費については、インフラ整備コストの5割が人件費(サイト構築と定常運用)という状況であり、これをどう抑えるかが悩みだった。解決策として、エンジニア作業の自動化を進めた。インフラ構成情報のデータベース化やテンプレート化を図り、構築自動化ツール「こじ郎」を自前で開発した。
3番めの、ビジネスのスピードにインフラが追いつかない問題については、発注から納品まで時間がかかり過ぎていたため、解決策として、ITリソースのプール化とプロビジョニングの自動化を実施した。これにより、納品までの時間を減らすことができる。実際、それまでは発注からサービスインまで最短6週間かかっていたのが、最短2週間に短縮できたという。
「小さく軽く!」という現場の声に応える
プライベートクラウドのRAFTELに加えて、社外のパブリッククラウドを活用するための施策にも取り組んできた。2010年頃から、「小さく軽く開発したい」という要望が事業部門から出てきたといい、これに応えるためにパブリッククラウド活用の機運が高まった。
ただし、パブリッククラウドには弱点があった。インフラを素早く用意するのは簡単だが、セキュリティ対策を用意したり、非機能要件を個別に作りこんだりすると、時間がかかってしまうことだ。解決策として、パブリッククラウドに欠けている機能群を共通化した機能ソフトウエア(フレームワーク)「Rクラウド」を開発した。
「Rクラウド」を適用することによって、プライベートクラウドとパブリッククラウドを混在させても、全体をプライベートクラウドのように一元的に管理できるようになった。クラウド間を専用線でつなぎ、パブリッククラウドへのアクセスはすべてプライベートクラウド上の踏み台サーバー(ログ取得用)を経由する形としている。
これらの環境を管理するツール群として、各種のオープンソースを活用している。例えば、Jenkins(継続的インテグレーション)、Git(バージョン管理)、Chef(サーバーの自動構築)、Serverspec(サーバーの自動テスト)、Fluentd(ログ管理)、Cacti(監視)、Zabbix(監視)などを使っているという。
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