「営業部門とマーケティング部門にある不均衡は解決すべき。同じ立場に立つために、ゴールを共有し協力していく必要がある」――。米ニューヨークを拠点とするデジタルマーケティング戦略コンサルタントのルース・スティーブンス(Ruth P. Stevens)氏はこう語る。同氏は米国のABM(アカウントベースドマーケティング)の動向に詳しく、「B2B Data-Driven Marketing: Sources, Uses, Results」(2015年)などの著書もある。米国のBtoBマーケティングの動向から、日本企業にとってのヒントを聞いた。(聞き手は松本 敏明)
米国のBtoBマーケティングは日本の数年先を進んでいるといわれます。最新の状況を教えてください。
マーケティングに関わる新しい技術が、ほぼ毎日といっていい勢いでどんどん生まれています。このためマーケターはテクノロジスト的な役割を求められるようになりましたが、往々にして技術に弱い傾向があります。
つまり今日のCMO(最高マーケティング責任者)は、マーケティング戦略を担う役割を果たせるだけでなく、技術にも造詣が深いという“二刀流”でないといけなくなりました。
もう一つ言えることは、マーケティング部門が自分たちの価値を示さなくてはいけないということです。そのためにマーケティング部門は営業部門と力を合わせて連携を図らなくてはいけません。
BtoBを収益の柱としてきた企業では、マーケティング部門の役割は売るための環境を作る促進役で、収益を上げるのは営業部門の仕事という考え方があり、営業部門がマーケティング部門を見下すことも少なくありませんでした。しかしこうした関係の不均衡は解決すべきです。営業とマーケティングは同じ立場に立たなくてはいけません。
そのためにマーケティング部門は営業部門とゴールを共有し、ゴールに向けて協力し、相互に尊重できる関係を築かなくてはならないのです。
そのために企業はどのような行動を起こしているのでしょうか。
米国ではABMが2017年に数多く取り上げられ、今も重要なキーワードとなっています。米パードットの調査によると24%の企業がABMを取り入れており、45%が2017年から18年にかけてABM関連の支出を増やしています(出典はhttps://www.pardot.com/blog/2018-findings-the-state-of-account-based-marketing/)。
そして、多くの企業がABMを話題にしています。私も、米国でABMが成熟しているという印象を持っています。
(特定のアカウントからの収益を最大化する)ABMを実践しようとすると営業部門とマーケティング部門は協力しなくてはいけならない状況になります。米国のBtoB企業がABMに注目しているのは、こうした理由があると考えます。
米国には営業部門とマーケティング部門が協力していると標榜している企業はありますが、私はもっと深く協力する余地があると思います。