網々商事のシステム課長であるAさんは、4年前に導入したファイアウオールのリプレイスで悩んでいた。機種選定のために、メーカーのWebページで製品情報を見たり、カタログを取り寄せたりしたが、どれが自社にとって“最適解”かがわからない。「より高速になった」「最新のセキュリティ機能を搭載」「つなぎやすさを重視」といった売り文句が並ぶが、メーカー間はもとより、同じメーカーの製品同士でもどれが自社に合っているか判断できないのだ。
そこでAさんは、売り文句通りならどこの製品でも問題がないだろうと考えて、製品を細かく調べずに既存機器より性能が少し上回る製品で済ますことにした。
ところが、これが大失敗だった。必要なセキュリティ機能をオンにしてみると、スループットがカタログ値の10%も出ないのだ。Aさんは大いに後悔した──。
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これは架空の企業の話だが、実際にネットワーク機器の選定に失敗したという話はよく耳にする。ネットワークをリプレイスしたり、新規で構築したりするとき、ネットワーク機器を選ぶ機会が訪れる。その際、どのメーカーのどの機種にしたらよいか、悩む担当者は多いはずだ。
メーカーのWebページやカタログには、製品の売り文句だけが目立ち、製品の機能や性能を異なるメーカー間では比較しにくくなっている。同じメーカーの製品でも、製品を分類したシリーズが異なるとどちらの性能が高いか低いかといった基本事項さえ、見ただけでは比較できないケースもある。
だからといって、製品選びを疎かにすべきではない。あるユーザー企業の担当者は、自社のセキュリティを高めるために、UTMを購入したが、セキュリティ機能をほとんどオフにして利用している。購入前に製品の仕様を確認したのにもかかわらず、導入後にUTMの性能不足によるボトルネックが生じてしまい、業務に支障を来したからだ。こういった失敗は珍しくない。記者はユーザー取材の中で「購入した機器の性能や機能が想定したものと違った」という失敗談を何度も耳にした(図1)。
どういった選び方だと失敗しやすく、どのように調べれば失敗をしないのか。ネットワーク機器を選ぶプロと言えば、まず挙げられるのがインテグレーターだ。顧客に代わって、厳しい目でネットワーク機器を選定する。そこには、経験に裏打ちされたプロならではの“鉄則”がある。
本特集では、そうしたネットワーク機器選びの鉄則を紹介しよう。ポイントを押さえれば、製品選びの失敗を減らせるはずだ。