最近は、モバイル通信における「制限」がなにかと話題になっています。これについて少し考えてみることにしましょう。無線を使うネットワークは、その原理から一定の帯域を一定のユーザー数でしか使うことができません。これは、通信方式や周波数割り当て、セル配置(基地局配置)で論理的に決まってしまいます。
いくつかの補助的な手段はありますが、ユーザー数や帯域を大きく拡大するものではありません。逆にいうと、既存のセルを分割したり、新しい通信方式の採用や新たな周波数帯の割り当てがない限り、ユーザー数や帯域を拡大することはできません。しかも、これらは、すぐにはできることではなく、順次、基地局を改修していくことでしか実現できません。
そういうわけで、モバイルネットワークは、一定の「資源」をみんなで共有している状態になります。ところが、そのなかに、過度に通信を行う人が存在します。簡単にいうと、どこかに名水をくみに行ったら、みんなはペットボトルなのに、ポリタンク10個に水をくんでる人がいて、長蛇の列になっていたという状態です。
以前にあったP2P問題(ファイル交換のためのP2Pプログラムが常時通信していて帯域を圧迫していた)のときの調査では、上位3%のユーザーが帯域の85%を占有していたといいます。こうした大量利用ユーザーは、同じ基地局やネットワーク内の設備を使う人にとって大きな問題になり、さらには、そのモバイルネットワークサービス全体にも影響します。
筆者は、事業者の肩を持つつもりも、通信制限を歓迎しているわけでもありません。ですが、通信制限の問題で一番の原因は、こうした過度に帯域を占有する「不心得者」ユーザーにあり、その対策のためには、適切な通信制限は必要と考えています。