農機大手のクボタは2014年6月から営農支援サービス「KSAS」を始めた。農機のセンサーから得られる“ビッグデータ”を分析し、コメ農家の経営改善に生かす。国内農家をITで支援し、農機需要をつなぎ留めようという前例のないプロジェクト。農機開発部門とIT部門が共同でデータ可視化に取り組み、新サービス開始にこぎつけた。
クボタは2014年6月からITを使った新サービス「KSAS(クボタ・スマート・アグリ・システム=ケーサス)」を始めた。「農業経営を見える化」するというコンセプトを掲げ、ITで農家を支援するものだ。
クボタの長網宏尚・農機第一事業推進部KSAS業務グループ長は「当社が持つ農機の技術とITを組み合わせることで、お客様である農家がもっともうかるようにしたい」と狙いを語る。
クボタにとって農機を売るだけではなく、農家の経営支援にまで踏み込む新規事業に当たる。農機の各所に搭載したセンサーから取得した“ビッグデータ”を様々な用途で活用する「M2M(マシン・ツー・マシン)」の仕組みを取り入れた新機軸のシステムでもある。サービス開始後最初の農繁期が過ぎた同年12月の時点で登録ユーザーは650件と、順調なスタートを切った。
KSASの仕組みはこうだ(図1)。クボタ製の農機(現時点では田植え機、トラクター、コンバインに対応)にはKSAS対応の車載無線ユニットを搭載する。2014年に発売した比較的大型の農機に標準搭載し、初年度に計5000台程度を販売する目標だ。これらを使って田植えや収穫などの作業をするたびに、農機の各所に搭載するセンサーからデータを取得。これを無線ユニットに集約する。

さらにユニットに内蔵した無線LAN(Wi-Fi)機能で、「KSASモバイル」と呼ぶAndroidスマートフォンにデータを送る。KSASモバイルの画面上では、作業の進捗状況などをチェックできる。
KSASモバイルは、農機から取得したデータをクラウド上の「KSASサーバー」へ中継する機能も備える。ここでの通信にはクボタがMVNO(仮想移動体通信事業者)として提供するNTTドコモの3G/LTE回線を使う。