パブリッククラウドを使ったシステム構築を得意とするベンダーは、クラウドにデータをバックアップするなら、そのデータをクラウドで活用することをぜひ考えたいと口をそろえる。

 有力な活用法の一つが、パブリッククラウドをDR(ディザスターリカバリー)拠点にすること。DR拠点は自前でデータセンターを2カ所保有し、システムを用意するとコストがかさむ。パブリッククラウドをDR拠点にすれば、必要な時だけ稼働させることでコストを節約できる。比較的規模が大きな社内システムの場合も、ストレージを利用しやすくするゲートウエイを設置する構成を採用すると、さほど手間を掛けずに構築・運用できる。

 参考にしたいのは、コニカミノルタの事例だ。同社は東日本大震災を受けてBCPの方針を見直し、災害発生からのシステム復旧に三つのレベルを設けた。最も復旧の優先度が高い「クラスA」は、安否確認などに用いるシステム、続いて基幹システムなど、事業再開に必要なシステムは「クラスB」に、そのほかのシステムを「クラスC」とした。

 これらのうち、クラスBのシステムのバックアップ先としてAWSを選択し、DR環境を構築した。クラスBの方針は「設定したリカバリーの基準を満たしながらも、コストはできるかぎり抑える」というもの。「データセンターを二重化するアクティブ-アクティブ構成ではコスト面で全く割に合わなかったが、パブリッククラウドを利用することで解決できた」(田井氏)。

 クラウドストレージにデータを転送するゲートウエイをオンプレミスに設置。このゲートウエイを介して、AWSのシンガポールのデータセンターにあるバックアップ用ストレージ(S3)にデータを転送する(図5)。ゲートウエイには、米NetAppの「AltaVault」を導入した。

図5●コニカミノルタが整備したDR環境
図5●コニカミノルタが整備したDR環境
オンプレミスの拠点に障害が発生した場合、パブリッククラウド側のゲートウエイにバックアップデータをリストアし、クラウド側で社内システムを稼働させる
[画像のクリックで拡大表示]

 AltaVaultはデータを受信すると、装置内で圧縮や重複排除、暗号化を実施してからデータを転送する。バックアップシステムを運用するコニカミノルタ情報システムの清水明人氏(サービス事業本部 基盤技術部)は、「AltaVaultにはフルバックアップで24Tバイトを送っている。しかしクラウド側に転送する容量は、5Tバイト程度に抑えられる」と話す。

 運用体制も従来とほぼ変えずに済んだ。AltaVaultは、バックアップ対象元データを保持するファイルサーバーやバックアップソフトからはNASに見える。従来使っていたテープ装置の代わりにAltaVaultをバックアップ先に指定した。

この先は日経クロステック Active会員の登録が必要です

日経クロステック Activeは、IT/製造/建設各分野にかかわる企業向け製品・サービスについて、選択や導入を支援する情報サイトです。製品・サービス情報、導入事例などのコンテンツを多数掲載しています。初めてご覧になる際には、会員登録(無料)をお願いいたします。