最近、リードナーチャリングに取り組もうとしている企業が増えています。展示会、セミナー、Webサイト、メール、広告など、これまでそれぞれ単独で実施してきた施策を有機的に結び付けて、具体的な案件受注まで事を運ぼうとしています。実施に当たっては、どこの企業でもマーケティング部門が率先して取り組もうとする傾向があります。
リードナーチャリングは、営業部員が常日ごろ行なっている営業クロージングのノウハウを、インターネットを活用して効率化することなのです。そのため、営業部門が参画しないナーチャリングの成功はあり得ないと思います。
このコラムは、今回が最終回です。これまで説明してきたリードナーチャリングを、どういう体制で実施すべきかを説明していきます。
1. ナーチャリングは商品単位に実施する
複数の商品を扱っている企業では、社内にあるすべての見込み客のデータを集めて、毎月1~2回のメールマガジンを定期的に配信しているところが多くみられます。社内にある見込み客データを一元管理しても、リードナーチャリングはうまく運用できません。
なぜなら、商品によって、ターゲット企業の業種や規模が大きく異なり、ナーチャリングするシナリオや確度の高い見込み客を絞り込むストーリーが異なるからです。また、アプローチする際の次のアクションも商品によって当然異なります。商品ごとに売り方が違うのと同じで、適切なナーチャリング方法も商品ごとに異なるのです。
商品単位のナーチャリングが必要な理由は、以下の4つが挙げられます。
(1)ホットな見込み客を絞り込む方法が違う
ホットなお客様の行動は、業種、製品の特徴(単価など)、購入までの期間によって異なるので、製品ごとにナーチャリングする方法、つまりホットなタイミングを察知する方法が異なります。さらにWebサイトのコンテンツの充実度や営業体制によっても、絞り込む方法は変わってきます。
(2)メールの配信で支障が生じる(見込み顧客にリーチできなくなる)
メール配信は、見込み顧客の関心のあるテーマや情報に絞って配信しないと閲覧してもらえません。開封率が上がらず、受信拒否も増加します。開封率を高めたいなら、商品単位のメール配信が理想です。受信拒否者の管理も、商品単位およびメールの種類ごとに実施する必要があります。
(3)営業部員に精度の高い見込み客情報を手渡す
営業部員が欲しい見込み客の情報の精度は、営業部門の規模や人数、手渡す時期によって大きく変わります。例えば、受注の確度が低いリードでも良いから、とにかくたくさん欲しい場合もあれば、営業部員の人数が限られているので受注確度の高い案件のみが欲しい場合も多々あります。後者の例では、営業部員に見込み案件情報を渡しても、3割以上の受注確率がないと、営業部員は次から対応しなくなります。営業部員は今期の受注追い込みに忙しく、少しでも確度の高い案件をフォローしたいので、空振りの案件が多いとマーケティング部門が用意する案件を信用しなくなるのです。精度の高い案件を営業に手渡すためには、絞り込みのシナリオや条件設定が変わってきますので、商品単位にナーチャリングを実施すべきなのです。
(4)何に注力すべきか、どこを改善すべきか分からなくなる
展示会・セミナーのイベントを企画・実行する人、見込み客データを管理する人、メルマガを作成・送信する人、Webサイトのページを作る人、ネット広告を担当する人、見込み客の行動をチェックする人、ホットなお客さまをフォローする人などが、縦割りの組織で分業していることがあります。自分が担当する業務をこなすことに目がいってしまい、売りたい商品の営業効率化を図る施策として最も効率的な施策を選択する人がいません。ナーチャリングの効果的な施策は、商品ごとに変わるので注意が必要です。
まとめますと、取り扱い商品の種類が多い企業の場合は、商品ごとの顧客に合わせたナーチャリングが必要ということになります。
2. まずは営業の現状を知ることから始める!
初めてナーチャリグに取り組むのであれば、特に売り上げを増やしたい、営業効率を上げたいと考えている商品を1つ選び、以下のステップで実施することをお勧めします。
(1)見込み客のターゲットを想定(再定義)する
業種、規模、地域、部署、役職、受注までの期間、受注金額、企業数、人数などをきっちり定義する。
(2)お客さまの製品選定の行動を想定する
純広告、展示会、セミナー、Webサイト、メール、営業担当、知人など、商品を知るきっかけを探る。
(3)自社に問い合わせるまでのストーリーを作る
コストパーフォーマンスの高いものを選択する。
(4)ナーチャリングの目的・成果を決める
新規案件の獲得件数、提案後の取りこぼしの撲滅、展示会・セミナーのフォローなど、目的や成果を明確にする。
(5)絞り込み方法のシナリオを作る
成果が最もでる絞り込み条件を試行錯誤しながら探る。必要に応じて、Webサイトのコンテンツやメールの本文を改善する。
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