「ライナー券はお持ちでしょうか」。JR金沢駅から「あいの風ライナー」に乗り込むと、制服を着た車内アテンダントが笑顔で声を掛けてくる。手にしているのはタブレット端末とモバイルプリンターだ。降車駅を告げて、ライナー券代300円を支払うと、プリンターから打ち出されたライナー券が手渡される。そこには列車名、日付、座席番号などが記載されている。
この、全国でも例のないスマートデバイスを活用した車内指定席発券システムを導入したのは、2015年3月14日に開業したばかりの「あいの風とやま鉄道」。北陸新幹線の開通とともに、JR 西日本から富山県内の在来線(北陸本線)を継承し、石動駅から越中宮崎駅まで、富山県内を東西に横断する路線を運営する第三セクターである。
新たな運営体制のもとで、より地域に密着した生活路線を目指す同社は、2015年3月14日の開業に合わせ、快速列車「あいの風ライナー」の運行を始めた。JR西日本時代の特急列車に替わり、「区間内の速達性」を提供し利便性を向上させる狙いだ。より快適に移動してもらうため、全席指定とした。ライナー券は車内のほか、停車駅の窓口でも5日前から購入できる。
しかし、このライナーの運行にあたっては大きな課題があった。全席指定のライナー券を発行するためのシステムが新たに必要だったことだ。「問題は、ライナー券の料金収受の方法だった」。今回のシステム開発を主導した、あいの風とやま鉄道 運輸部電気課の吉村隆章氏は当時を振り返る。