写真●iPhone 6s
写真●iPhone 6s
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 例年通り、今年も9月にiPhoneの新機種「iPhone 6s」が発売された(写真)。これまで3回に渡り、記者の眼でiPhone 6の無線実装、パワーアンプを中心としたRF実装ベースバンド実装アンテナ実装について考察してきた。今回のiPhone 6sではそれらの何が変わったのか、あるいは変わらなかったのか点検した。

 今回は残念ながら実際にiPhone 6sを分解する機会に恵まれなかったため、主にiFixitChipworksTechInsightsの分解記事や写真を参考にした。

パワーアンプ:バンド数は増えたがモジュール数が減る

 スマートフォンを構成する部品のうち、無線機能を実現する要(かなめ)の1つがパワーアンプである。スマートフォンの送信信号を遠くの基地局まで届くように増幅する役割を果たす。パワーアンプは周波数ごとに特性が変わるため、多数のLTEバンドに対応するには、そのバンドごとにパワーアンプを用意する必要がある。少数機種で世界中をカバーするiPhoneは、それだけ多くのパワーアンプを搭載する必要があるわけだ。

 iPhoneのパワーアンプ実装で特徴的なのは、多数のパワーアンプやデュプレクサー(フィルターの一種)などをまとめた「PAD」というモジュールを使う点だ。この方法は、RF実装で最も難しいとされるパワーアンプとデュプレクサーのマッチングをモジュールメーカーが完了させておくため、セットメーカーであるアップルはそれを載せるだけで済むという(アップルにとっての)メリットがある。

 iPhone 6では、6個のPADが使われていた。
●SKY77802-23(スカイワークスソリューションズ)
●SKY77803-20(スカイワークスソリューションズ)
●SKY77356-8(スカイワークスソリューションズ)
●ACPM-8020(アバゴ・テクノロジー)
●ACPM-8010(アバゴ・テクノロジー)
●TQF6410(トリクイント・セミコンダクター)

 これに対し、今回のiPhone 6sでは、基板写真を見るとPADの数は4個に減っているようだ。
●SKY77357(スカイワークスソリューションズ)●SKY77812(スカイワークスソリューションズ)
●AFEM-8030(アバゴ・テクノロジー)
●TQF6405(コルボ)

 一方で、iPhone 6sでは対応するLTEバンド数が増えている。iPhone 6(モデルA1586)がサポートするLTEバンド数は20バンドだが、iPhone 6s(モデルA1688)は2バンド多い、22バンドをサポートしている。バンド数が増えているにも関わらずPADモジュールの個数が減っているということは、PADに含まれるパワーアンプやデュプレクサーの個数が大幅に増えているということにほかならない。実際、基板写真を見比べてみると、iPhone 6sに搭載されているPADがかなり大型化していることが見てとれる。

 パワーアンプ回りのRF設計については、よりモジュールメーカー側に比重が置かれ、アップルは極力RF設計には関わりたくないという意図が透けて見える。