スマートフォン(スマホ)の内部を目にする機会はめったにない。だが、内部をつぶさに観察すると、メーカーがどこに重きを置き、何にこだわっているのか分かる。以前、「iPhone 6の無線実装に見るアップルの頑固さ」と題して、iPhone 6独特のRF(高周波無線)実装から、アップルのモノづくりに対する考え方を考察した。今回は続編として、ベースバンドプロセッサーに関する実装を取り上げたい。

 まずは一般的なスマホの構成要素を簡単に確認しておこう(図1)。アプリケーションプロセッサー、ベースバンドプロセッサー、RFトランシーバー、フィルター、パワーアンプ(PA)、デュプレクサー、アンテナスイッチ、アンテナが主な構成要素だ。今回は、ベースバンドプロセッサーとアプリケーションプロセッサーに着目する。

図1●スマートフォンの主要要素と受信処理
図1●スマートフォンの主要要素と受信処理
スマートフォンを構成する要素のうち、主にLTEなどのモバイル通信に関わるものを図示した。図では省略しているが、フィルターやパワーアンプ、デュプレクサーは、実際にはバンドやモードごとに個別に用意する。受信側で使われるLNA(Low Noise Amplifier)は、最近はRFトランシーバーに含まれるため省略した。
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 ベースバンドプロセッサーは、LTEなどのモバイル通信に必要な処理の大半を実行する要(かなめ)の部品だ。例えば、スマホでWebブラウジングすることを考えてみよう。

 HTTPのデータやそれを運ぶIPパケットは、アプリケーションプロセッサー上で動作するWebブラウザーやOSで作られる。ただし、そのIPパケットは、そのままでは無線で伝えることはできない。そのデータを電波に載せる信号に加工する部品がベースバンドプロセッサーだ(図2)。

図2●ベースバンドプロセッサーでのLTE処理
図2●ベースバンドプロセッサーでのLTE処理
ベースバンドプロセッサーで実行されるLTEのデータ送受信の処理を示した。これ以外にも、2G、3Gのデータ/音声送受信、様々な制御処理などが行われる。
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