カドカワは2016年5月27日、地方自治体とドワンゴ、N高等学校が連携する地域の教育拠点「Nセンター」プロジェクトを開始すると発表した(写真1、N高等学校の関連記事)。7月に鹿児島県長島町が「Nセンター長島」(仮)を開設、時期は未定だが群馬県南牧村では教育拠点開設のほか、村の活性化に取り組む行政職員体験ツアーも実施する。佐賀県武雄市も開設を予定している。
Nセンターは、(1)ネットを活用した公営の学習塾、(2)職業体験やプログラミングなどのキャリア学習センター、(3)通信制高校の生徒が通って学べる拠点、といった役割を担う。(1)についてはN高等学校が実際に用いている課外授業アプリを使うことで、各拠点で双方向の授業が受けられる(写真2)。予備校講師が教える大学受験のための授業なども受講可能だ。拠点には廃校舎や古民家など地域の施設を活用する。
(2)はN高等学校が課外授業で提供しているプログラミング授業や、カドカワ傘下の専門学校運営のバンタンが展開するファッションなどの授業を提供。これらを通して就職などに生かせる学習ができるほか、都心部の若者向けに地方ならではの職業が体験できるツアーなども企画。地方からの情報発信拠点としても位置付ける。(3)はN高等学校だけでなく、他の通信制高校も含めて生徒がチューターの指導を受けられる学習拠点として活用する。
Nセンター開設には、少子化による地域間の教育格差が背景にある。過疎が進む地方自治体では、人口減少や高齢化で学校の統廃合が進み、それによって地域に高等学校がなくなるどして教育レベルが低下、若年層や子育て世代が都市部に移り住み、さらに人口減少が進むという悪循環に陥っているという。実際、全国の自治体の4分の1には高等学校が存在していない状況がある。こうした悪循環を断ち切る取り組みの一つがNセンターであり、都市部と地方の教育格差解消を目指すとしている。
Nセンターの発表に併せて、地方創生と教育をテーマにしたカンファレンスも開催された。基調講演に登壇した石破茂地方創生相は(写真3)、東京一極集中によって結果的に地方の疲弊が進み、人口減少の悪循環に陥っている状況などを説明した後、「いろいろな通信の発達、ネットの発達によってそれを変えることができるのではないかと思っている」と地方創生におけるICTの役割を語った後、教育についても触れた。
石破氏は、「いかにして社会に適合していくかを教えるのも教育の重要の役割、個性を伸ばすというのも教育の重要な役割。この二つは二律背反的なところがあり、この二つをどうやって満足させるかという意味において、N高校は壮大な実験だと思っている」と述べた。