「日本でも世界でも、教育にネットのコミュニティ作りを活用し、勉強においてもここまでネットで取り組む例はないのではないか」。2016年3月22日、カドカワ代表取締役社長の川上量生氏は発表会の場でN高等学校をこう語った。

 22日の発表は、(1)N高等学校がネット課外授業において双方向の教育システムを独自に開発して提供すること、(2)ネットの高校ならではの部活や遠足を展開すること、そして(3)ネットを活用した教育やコミュニティ作りについて専門家の知見を得たり、得られるデータを分析・研究に活用したりといったことを実施するためのアドバイザリーボードを設置すること(写真1)の3点。

写真1●N高等学校のアドバイザリーボードのメンバー。写真右から社会学者の古市憲寿氏、教育経済学者で慶應義塾大学准教授の中室牧子氏、教育社会学を専門とする秋田大学助教の鈴木翔氏、精神科医で筑波大学教授の斉藤環氏。左はカドカワ代表取締役社長の川上量生氏
写真1●N高等学校のアドバイザリーボードのメンバー。写真右から社会学者の古市憲寿氏、教育経済学者で慶應義塾大学准教授の中室牧子氏、教育社会学を専門とする秋田大学助教の鈴木翔氏、精神科医で筑波大学教授の斉藤環氏。左はカドカワ代表取締役社長の川上量生氏
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 冒頭の発言は、アドバイザリーボードの設置を発表した際に述べられたもので、川上氏は次のように続ける。

 「ネットの高校ですから、その際に得られる情報は全てログを取りますし、解析が可能。僕らの挑戦にはうまくいく部分もあれば、いかない部分もある。それも含めて公開し、研究者の方にネットにおける教育とはどういうものなのか、ネットのコミュニティ作りとは果たして本当に可能なのか、どのような問題が起こるのか、といったところをぜひ研究の対象にしていただきたい」

 ニコニコ動画などコミュニティ運営に長けたドワンゴを擁するカドカワグループが学校を作る真価はまさにこの点にある。生徒を実験材料にするかのようなイメージを与えるかもしれないが、多くの学校は日々児童や生徒の学校での活動を把握し、よりよい教育の提供を目指している。大学の教育学部付属の小中学校・高等学校は研究の場という側面もある。

 同様にネットでそうしたことができるのがN高等学校だ。N高等学校は多様な生徒を受け入れるためのプラットフォームでありつつ(関連記事)、ネットやIT機器を当たり前のように生活に取り込んできた“デジタルネイティブ”世代の新たな教育の可能性を探る場であるとも言える。