米当局が米ニューヨーク州で犯罪捜査に関する「iPhone」のロック解除を引き続き米Appleに要請している問題で、Appleは現地時間2016年4月15日、同州の裁判所に対し、当局の主張を退けるよう求める書類を提出したと、複数の海外メディア(米TechCrunch英Daily Mail Online)が報じた。

 iPhoneのロック解除を巡っては、米カリフォルニア州でのAppleと米連邦捜査局(FBI)の対立が注目を浴びた。同州で昨年12月に発生した銃乱射事件の捜査に関して、Appleがロック解除命令を拒否し、法廷闘争に発展しかけたが、FBIがAppleの助けを借りずにロック解除に成功したため、米司法省(DOJ)が3月28日に訴訟を取り下げた(関連記事:DOJがAppleとの訴訟を取り下げ、iPhoneロック解除に成功)。

 一方、ニューヨーク州では、違法薬物捜査で押収されたiPhoneのロック解除をFBIがAppleに要請したが、同州東地区連邦地方裁判所のJames Orenstein下級判事は2月、Appleの主張を支持する判断を下し、捜査当局が根拠とする「All Writs Act(全令状法)」の適用は違憲の可能性があるとの見方を示した。これを不服としてDOJは3月、裁決の見直しを同地裁のMargo Brodie上級判事に求めた。今月初めには、カリフォルニア州で成功したロック解除方法はニューヨーク州でのiPhoneには使えないため依然Appleの助けが必要だとして、訴訟を継続する姿勢を明らかにしている(関連記事:iPhoneロック解除問題 米当局、Appleへの協力要請継続)。

 Appleは今回の申し立ての中で、「政府は、Appleの協力が不可欠であることを証明する責任を十分に果たしていない」と批判。あらゆる方法を試した上で、Appleの協力以外に手段がないことを証明できていないと指摘している。

 カリフォルニア州の銃乱射事件はテロ行為として捜査され、国家安全保障にかかわる重要な問題だったが、ニューヨーク州の事件はテロのとの関わりはなく、逮捕された薬物売人はすでに罪を認めている。ニューヨーク州の当該iPhoneはカリフォルニア州のそれよりOSが古いため、セキュリティ強度は低い。

 Appleは、「犯罪者を追う法執行機関の活動を強く支持するが、政府によるAll Writs Actの全面的な適用は間違いであり、今後、政府が無制限に裁判所命令を獲得できてしまう可能性がある。将来、前例として使える命令を得ることこそが政府の目的だ」と非難している。