犯罪捜査に関連する「iPhone」のロック解除を巡って米Appleと米当局が対立している問題で、米司法省(DOJ)は現地時間2016年3月28日、Appleの助けを借りずにiPhoneをロック解除する方法が見つかったとして、訴訟の取り下げを申請した。DOJが裁判所に提出した資料(文書共有サイト「Scribd」で公開)から分かったこととして、複数の米メディアが報じている。

 Appleは、昨年12月に米カリフォルニア州サンバーナディーノで起きた銃乱射事件の捜査への協力を米連邦捜査局(FBI)に求められ、犯人が所持していたiPhoneをロック解除するよう、今年2月に裁判所命令を受けた。しかしAppleは、要請に応じることは全iPhoneユーザーをセキュリティ侵害のリスクにさらすことになるとの懸念を強調し、「危険な前例になる」として裁判所命令の無効化を申し立てた(関連記事:Apple、「iPhone」ロック解除の裁判所命令に正式申立)。同社は裁判所命令が「All Writs Act(全令状法)」を根拠としていることについても抗議し、多くの米技術企業などから支持意見書が裁判所に提出された(関連記事:Appleの「iPhone」ロック解除拒否問題、業界から多数の支持意見書)。

 AppleとDOJの第1回目の法廷審問は3月22日に行われる予定だったが、DOJがAppleの助けを得ずにiPhoneをロック解除できるかもしれないとして前日に審問の中止を申請し、延期が決定。DOJは外部組織による代替手段が有効かどうかテストし、その結果を4月5日に報告するとしていた(関連記事:アップルに頼らずiPhoneをロック解除可能? 法廷審問が中止)。

 DOJの提出資料によると、すでにFBIは犯人のiPhoneに保存されていたデータに無事にアクセスし、現在その情報を詳しく調べているという。

 大きな議論を呼んだAppleとFBIの争いは突如終了したが、第三者がiOSのセキュリティを破ったことで、ほぼハッキング不可能なOSというAppleの主張が覆されてしまったと、米AppleInsiderは指摘している。AppleはFBIがiPhoneをロック解除した方法を知る必要があるが、FBIはそれを機密扱いにする可能性があり、それによって新たな対立が生じるかもしれないと、米New York Timesは報じている。

 FBIはロック解除に協力した外部組織の正体について明らかにしていないが、携帯電話のデータ抽出を専門とするイスラエルCellebriteの名前が噂にのぼっている(米CNETの報道)。