犯罪捜査のための「iPhone」ロック解除を巡って米捜査当局と米Appleが対立する中、今度は米Facebook傘下のメッセージングアプリケーション「WhatsApp」に対して米司法省(DOJ)が圧力を強めるかも知れないと、複数の米メディア(FortuneGizmodoArs Technicaなど)が報じている。

 最初に米New York Timesが関係筋の情報として現地時間2016年3月12日に伝えたところによると、当局は犯罪捜査のために連邦判事から盗聴許可をとってWhatsApp上の会話にアクセスしようとしたが、暗号化技術が障害になって捜査が進められないという。

 WhatsAppは昨年、暗号化技術を実装しており、暗号化されたユーザーの会話は同社でも見ることはできない。

 DOJがこの先どのような措置を講じるかはまだ決まっていないが、Appleと同様に法廷闘争に発展する可能性もある。

 Appleは、昨年12月に米カリフォルニア州で起きた銃乱射事件の捜査のためとして犯人が所持していた「iPhone 5c」のロック解除を裁判所に命じられたが、「危険な前例になる」とこれを拒否し、裁判所命令を無効にするよう正式に申し立てた。第1回目の法廷審問は3月22日に行われる予定で、技術企業や専門家らからAppleを支持する意見書が裁判所に提出されている(関連記事:Appleの「iPhone」ロック解除拒否問題、業界から多数の支持意見書)。

 また、米ニューヨーク州の別の裁判では、薬物捜査で押収したiPhoneのロック解除をDOJがAppleに要請していたが、ロック解除を拒否するAppleの主張を認める判決が先月下された。DOJは今月、裁決の取消を求める手続きをとっている(関連記事:iPhoneロック解除問題、米司法省がNY州地裁に裁決見直しを要求)。

 当局が何の捜査のためにWhatsAppメッセージへのアクセスを必要としているかは不明だが、少なくともテロ関連ではないという。

 WhatsAppのメッセージを巡っては、ブラジルで今月初め、薬物密売に関して使われたアカウントの情報開示要請に応じなかったとして、Facebook幹部が当局に一時身柄を拘束されたことが報じられた(関連記事:Facebook幹部、ブラジルで身柄拘束 情報の非開示で)。