犯罪捜査に関連する「iPhone」のロック解除を巡って米ニューヨーク州の米連邦地方裁判所がロック解除要請を拒否する米Appleの主張を認める判決を下した件で、米司法省(DOJ)は現地時間2016年3月7日に同裁決の取消を上級判事に求めたと、複数の米メディア(New York TimesCNETなど)が報じている。

 ニューヨーク州東部の地裁では、薬物捜査で押収されたiPhoneのロック解除をAppleに命じるよう求めて米当局が訴訟を起こしたが、James Orenstein下級判事は2月29日、「All Writs Act(全令状法)」を根拠にAppleにロック解除を強制することはできないとし、「同法が適用されれば合憲性に疑いが生じる」との判断を下した(関連記事:iPhoneロック解除問題 NY州裁判所はApple支持)。DOJはその時点で、判事に裁決の見直しを求める意向を示していた。

 米CNETが入手した裁判所資料(文書共有サイト「Scribd」で公開)によると、DOJは、今回の技術的協力の要請はAppleがこれまでに承諾してきた数十例と変わらず所定の手順に従ったものだと説明し、米カリフォルニア州の裁判所がAll Writs Actに基づくiPhoneロック解除命令を認めたことを強調した。また、薬物取引関連のiPhoneはOSが古く、過去にAppleが幾度か解除に協力したものと同じであり、「Appleは現在持っていない新たな機能を作り出すことを要請されているのではない」と主張している。

 カリフォルニア州では2月16日に、昨年12月に起きた銃乱射事件の犯人が所持していたiPhoneのロック解除をAppleに求める裁判所命令が下された。Appleは、iPhoneのセキュリティ機能を迂回するツールを作成すれば、iPhoneユーザー全員をサイバー攻撃などのリスクにさらすことになり、「危険な前例になる」として裁判所命令を無効にするよう申し立てている(関連記事:Apple、「iPhone」ロック解除の裁判所命令に正式申立)。

 カリフォルニア州での米当局との対立では、AppleのTim Cook最高経営責任者(CEO)は最高裁判所まで争う姿勢を示している(英Reutersの報道)。