「Software-Defined Workplace」。日本語に訳せば「ソフトウエア定義された職場」となるコンセプトを、米シトリックス・システムズが打ち出している。同社のマーク・テンプルトン社長兼最高経営責任者(CEO)は、「物理的な装置を不要にすることが、Software-Definedの本質だ」と語る。「物理的な職場」が無くなることで、社員が幸せになると語るテンプルトンCEOに話を聞いた。

(聞き手は中田 敦=日経コンピュータ)。

テンプルトンさんは2014年6月に、一度公表されていた引退を撤回しました。この件についてまず教えていただけますか。

 2013年に家族の不幸があり、自分の人生を変えるタイミングが来たと考えたことが、引退を表明した経緯でした。しかしその後、私には「シトリックスファミリー」というもう一つの家族がいて、その家族が私のことを癒やしてくれていることに気付きました。

写真1●米シトリックス・システムズ 社長兼最高経営責任者(CEO) マーク・テンプルトン氏
写真1●米シトリックス・システムズ 社長兼最高経営責任者(CEO) マーク・テンプルトン氏
テンプルトン氏の手前にあるのは「MacBook Air」ではなく、キーボードを取り付けた「iPad mini」。パソコンは持ち歩かないという
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 どの家族にも例外なく不幸は訪れます。不幸に直面して私は、神様との関係について考えるようになりました。なぜかは分かりませんが、神様は不幸を通じて、私の強さを試されている。それは会社も同じです。シトリックスも様々な障害に直面しています。そのような状況でも、シトリックスという家族とともに前に歩んでいく。そうすることを、私は選びました。

テンプルトンさんは今、改めて何に取り組んでいるのですか。

 引退を撤回してからのこの半年は、シトリックスの未来を改めて考える「Re Visioning」に費やしました。我々の顧客が何を未来に求めていて、それをどうやって届けていけばいいのかを考えました。

 そこで出した結論は、「顧客は『モビリティ』によるビジネスと人々の変革を求めている」ということです。「モビリティ」は、企業の生産性や従業員のワーク・ライフ・バランス、成長する機会やキャリアを大きく変えることができる力だと多くの人が気付き始めています。この変革を後押しすることが、シトリックスのこれからの姿だと考えました。

今なぜ、会社のビジョンを考え直そうと思ったのですか。

 シトリックスは創業から25年が経過し、売り上げは30億ドルを超え、従業員は9000人を数えます。人間に例えると、若者から大人になろうとしている「ヤングアダルト」にさしかかっています。人間は大人になる際に、大人としての長期的な目標と責任について考えなければなりません。