地銀グループ最大手のふくおかフィナンシャルグループ(FFG)が、「X-Tech Innovation 2015(クロステック)」と呼ぶビジネスコンテストを開催している。優れた技術・アイデアの発掘を目指す。2015年12月には最終選考を開き、表彰する予定だ。テクノロジー発の新しい金融サービス、FinTechの動きが盛り上がる中、FFGの横田浩二執行役員は「黒船のように恐れるつもりはない」としつつ、「コモディティ化した分野では、FinTechに取って代わられない取り組みが必要だ」と語る。

(聞き手は岡部 一詩=日経コンピュータ


ふくおかフィナンシャルグループ執行役員の横田浩二氏
ふくおかフィナンシャルグループ執行役員の横田浩二氏
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「X-Tech Innovation 2015(クロステック)」開催の狙いは何ですか。

 大きく三つある。一つは、技術革新を取り込み顧客層のシフトに対応したいという思いだ。現状、個人預金や取扱商品の当社顧客はシニア層に偏っている。ただし今後は、「ジェネレーション Y(1975年~1988年生まれ)」のようにデジタルサービスを日常的に使う顧客がメインになる。

 FinTechへの意識もある。SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)事業者やEC(電子商取引)事業者には融資業務を手掛ける会社も出てきた。手をこまねいて見ているのではなく、当社も対抗しなければならない。顧客基盤やブランド力は銀行の方が優れていると自負している。技術的な素地においても後れをとるわけにはいかない。そのために優れた技術を発掘するのが二つめの狙いだ。

 三つめは地域の会社や個人の取り組みを後押しし、地方創生を担うことにある。当社内に創業支援の部隊は設置しているものの、支援先は物販の企業などがほとんど。IT系スタートアップ企業の案件はあまりないのが実情だ。福岡には元々、ソフトウエア企業や技術者がたくさんある。この分野での創業や新規事業の機運が高まるきっかけにしたい。

 X-Techは今回初めての試みだ。優れた技術・アイデアを持つ企業や組織を探り出し、資金面での融資やビジネスマッチングなど何らかの形で当社が支援できれば、まずは成功と考えている。X-Techで発掘した技術などを当社のサービスに生かす道も模索したい。

 100件以上の応募を目指している。選考を重ねて最終的には10くらいに絞り、12月にピッチコンテストを開催する。国・地域は問わないが、地元である九州の企業や技術者への期待は特に大きい。

「決済サービス」と「シェアリングエコノミー」をコンテストのテーマにしています。

 ある口座から別の口座に資金を付け替えるといった伝統的な為替決済業務は、銀行の本業の一つ。給与振り込みや企業間の取り引きを仲介するといったサービスだ。元々地域の大手行では為替業務の占める割合が比較的高かったが、ここ10年でかなり減ってきた。その分、投資信託や保険の販売を増やしている状況だ。

 FinTech企業がいろいろな形で参入してきているのが決済領域ということもあり、この分野で競争力のある技術・アイデアが出てくることを期待している。

 シェアリングエコノミーをテーマの一つとしたのは、大きなムーブメントと捉えているからだ。今回のX-Techでは金融だけでなく、業種業態を横断する技術やアイデアもターゲットにしている。

 日本の銀行は規制が厳しいので、良いアイデアが出てきたとしても、当社が一緒になって事業を進められるかは内容次第。だが地域経済の活性化は、地域金融機関である当社の成長を促すことは間違いない。