雪印メグミルクがネットを活用したマーケティングで変わった取り組みを進めている。2013年に「雪印コーヒー」の生誕50周年を迎え、「オレたちのゆきこたんプロジェクト」と題してプロモーションの強化を開始。擬人化キャラクターのイラストコンテストに始まり、新宿駅でのゲリライベント、夏コミックマーケットへの出展と驚きの施策を次々と繰り出した。
 2014年も「2ndシーズン」として取り組みを継続し、今夏にはアイドルユニット「ゆきこたんズ」を結成してデビュー曲まで発表。ネットを活用した優秀な広告・マーケティングを表彰するD2Cの「コードアワード2014」(従来のモバイル広告大賞、7月に結果を発表)では、「ベスト・ブランディング」を受賞した。同社でプロジェクトを推進する市乳事業部飲料グループの竹谷和章氏に、企画の経緯や手応えなどを聞いた。

(聞き手は榊原 康=日経コミュニケーション


プロジェクトを立ち上げた経緯は。

雪印メグミルク 市乳事業部飲料グループの竹谷和章氏
雪印メグミルク 市乳事業部飲料グループの竹谷和章氏
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 「雪印コーヒー」は昨年、1963年の発売から50周年を迎えた。復刻版の発売などのアイデアも出たが、ブランドの再生(リブランディング)を図ることにした。雪印コーヒーの平均購入者層は40歳代が中心で、若年層(20歳前後)の飲用数が競合他社に比べて少ない。ロングセラーと呼ばれる製品やブランドの宿命と言えるが、コアのターゲットがどんどん高齢化してきている。高齢化しても、そこからまた若年層に循環すれば問題ないのだが、それをうまく図れていなかった。50周年をきっかけに若年層へのブランドパワーを再構築しようと考えた。2013年の春に始めた。

「オレたちのゆきこたんプロジェクト」の公式サイト
「オレたちのゆきこたんプロジェクト」の公式サイト
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 では、若年層にどう訴求すればいいのか。単純に人気タレントによるテレビCMやウェブ広告を大量投入する方法もあるが、若年層には必ずしも響かない。やはり若年層の反応が高いのはネットとスマホ。特にソーシャルメディア、SNSに着目した。ポイントは「相互にコミュニケーションを図る」こと。それも我々の一方的な情報発信ではなく、若年層が「自分ごと化」できるようなコミュニケーションが重要と考えた。これまでは、雪印コーヒーのブランドが強かったため、こうした視点が足りなかったと考えている。

 一方、社内には、雪印コーヒーがブランドとして「十分に成熟した」「できることはやり尽くした」といった思い込みのようなものが漠然とあった。現状の維持、さもなくば徐々に低下していくことすら想定されるなか、異なるターゲットに全く新しいブランドを打ち出していくことが重要と考えた。SNSを使い、参加ユーザーと一緒に雪印コーヒーを盛り上げていく。これが、企画の発端になる。

 これまではSNSを主体に深く取り組んだプロモーションを展開してこなかったが、今回は専用の公式サイトを設置。イラストコミュニケーションサービスの「pixiv」と組み、擬人化キャラクター「ゆきこたん」(雪印コーヒーは社内で「雪コー」と呼ばれている)のイラストコンテストを開催した。2013年4月に約7000点の作品の応募があり、そこから200点に絞って最終的に優秀賞6作品を決めた。6作品は商品パッケージに採用しており、2013年7月下旬~8月下旬の期間限定で販売した。