「ワークスタイル改革は人に焦点を当ててこそ。ITは道具にすぎない」。こんな意見を耳にすることは多い。では従業員だけが快適な環境を作ればよいのか。ITコンサルティング大手の米アバナードのアダム・ワービーCEO(最高経営責任者)は、それでは不十分と指摘する(写真1)。従業員の先にいる人、つまり顧客にも目配りする必要があるという。ITを使った働き方改革の勘所と世界の事例を聞いた。

(聞き手は玉置 亮太=日経コンピュータ

日本ではITを使った業務改革に取り組む企業が増えていますが、成果を出すのは容易ではありません。

写真1●米アバナードのアダム・ワービーCEO
写真1●米アバナードのアダム・ワービーCEO
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 その問題は世界共通だ。ITもビジネスも大きく変化している現在、企業は変化を適切にとらえて適応していかなければならない。これは困難が伴う作業だ。

 IT活用による業務改革のなかでもとりわけ重要性を増しているのが、従業員の働き方を変えて生産性を高めることだ。企業は従業員一人ひとりの集合体。従業員の働き方を改革することが企業の競争力の強化につながる。

ITを使った働き方改革を進める上で重要な点は何でしょうか。

 技術ではなく「人」に焦点を当てることだ。IT活用の働き方改革に失敗する企業は、人ではなく技術の選定や導入に目が向いてしまっている点で共通している。

 人の動き方や意思決定の傾向、感情や習慣。これらを起点に、働き方改革を議論する必要がある。現状の課題の洗い出しやIT活用で目指す理想的な働き方、改革計画やプロセスの策定、評価指標の策定など、変革の旅(ジャーニー)の全体にわたる原則だ。

 ここで言う人には2種類ある。企業の従業員と、そして企業の顧客だ。

従業員の仕事は顧客が満足する製品やサービスを提供することだから、というわけですか。

 そうだ。従業員の働き方を見直すには、顧客の購買行動や意思決定を起点にしてあるべき姿をデザインし、その上で必要な技術を選ばなければならない。こうした考えの下、当社はITを使った働き方改革の支援サービスを2種類に分けている。一つは「デジタル・ワープレース」と呼ぶもの。これは企業の従業員を対象に、直接的に働き方を効率化する支援サービスだ。