タイに本社を置くプロンプトナウは約100人の規模ながら、同国の四大銀行であるカシコン銀行やサイアム商業銀行(SCB)のモバイルバンキングを手掛けるなど、タイのFinTechにおいて重要な役割を果たしている。2016年5月には、ASEANでのビジネス拡大を狙うTISが、約60%出資して連結子会社化している。タイの金融機関にとって欠かせない存在である同社でトップを務めるNatjira Honda氏に、タイのFinTechについて話を聞いた。

(聞き手は岡部 一詩=日経コンピュータ


写真1●プロンプトナウ ジェネラルマネジャーのNatjira Honda 氏
写真1●プロンプトナウ ジェネラルマネジャーのNatjira Honda 氏
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金融機関向けに、どのような事業を手掛けているのでしょうか?

 まず、タイの金融業界の現状を説明しましょう(写真1)。昨年、四大銀行の一角であるカシコン銀行とクルン・タイ銀行(KTB)の支店が初めて減少に転じました。同じく四大銀行のバンコク銀行やサイアム商業銀行(SCB)でも、支店拡充の取り組みは減速しています。銀行が明らかに変わり始めているのです。

 一方で、勢いが増しているのがモバイルバンキング。モバイルバンキングの利用が、2年連続で60%増えています。保守的な文化を持つ銀行であっても、顧客の趣向に変化が生じていることに気づいたわけです。

 タイでFinTechの動きが出始めたのは約2年前のこと。FinTech企業の数も増えてきています。2015年12月には政府が「e-Payment構想」を採択し、国民共通ID(Any ID)を使った決済手段の提供などを進める方針を打ち出した。2016年に入って、中央銀行もFinTech企業を歓迎する姿勢を鮮明にしています。

 国全体でFinTechが盛り上がり始めるなか、積極的に投資しているのがカシコン銀行とSCB。当社は両行と取り引きがあります。最初に手掛けたのが、カシコン銀行のモバイルバンキングアプリです。

 タイでインターネットバンキングがスタートしたのは、2005~2006年ごろのこと。その後、ノキアのビジネス向け携帯端末が大流行したのを機に、カシコン銀行向けに取引明細や振り込みができるモバイルアプリを開発しました。これが、金融機関向けビジネスを本格化させる契機になりました。海外系の開発会社との競争にも何とか打ち勝つことができ、SCBやKTBにもモバイルバンキングを提供することに成功しています。