フィンランドノキアのネットワーク事業部門であるノキアネットワークス。モバイルブロードバンドのインフラ分野で世界大手の一角を占める存在だ。そんな通信インフラの分野では現在、NFV(Network Functions Virtualisation)をはじめとして大きな変革が起きている。大手インフラベンダーは、このような動きをどのように捉えているのか。ノキアネットワークスのエグゼクティブバイスプレジデント 兼 最高技術責任者(CTO)であるホセイン・モーイン氏に昨今の通信市場の変化について聞いた。

(聞き手は堀越 功=日経コミュニケーション

NFVは、これまでのキャリアグレードの通信機器市場を汎用サーバー上の仮想化基盤で塗り替えようという動きだ。これまでの通信機器市場で見られるような標準化によるアプローチだけではなく、オープンソースを活用する動きも目立っている。

 通信市場における標準化は、一般的にネットワークの構成要素を結ぶインタフェースを仕様化するものだ。様々なベンダーの装置を相互接続するために、通信市場において標準化は必ず必要になる。

 一方、オープンソースはソフトウエア開発のためのテクニックだ。コードベースでソフトウエアにコントリビュートし、コミュニティの皆がメリットを得られるアプローチになる。

 ノキアは、通信インフラを発展させるテクニックとして、オープンソースによるアプローチを好んでいる。オープンソースのコミュニティに数多くの開発者が存在することも大きい。ノキアの中にも多くのエンジニアがいるが、現在はもっと多くのエンジニアが求められている。

NFVの動きの中で、OpenStackやOpenDaylightのようなオープンソースのプロジェクトの存在感が増している。これらのオープンソースは、いわゆるキャリアグレードの信頼性や冗長性を担保できるのか。

 OpenStackやOpenDaylightの開発者コミュニティでは、十分信頼性があると考えているだろう。しかしノキアや他の通信インフラベンダーにとっては、ファイブナイン(年間稼働率が99.999%)の信頼性を担保できなければ十分とは考えない。オープンソースに対し、このような信頼性を付け加えることこそ、我々の仕事だ。

 最初の段階で信頼性を担保する必要はない。オープンソースを利用することで、基本的な機能の開発やテストは必要なくなり、開発コストを最小化できる。オープンソースの力を借りつつ、我々がファイブナイン(99.999%)の信頼性の価値を付け加える。

オープンソースの開発サイクルは、半年に一度のリリースなど非常に短い。一方、通信インフラに利用される機器は、10年近い年月利用されるなど足が長い。オープンソースのスピード感にギャップを感じることはないのか。

 そんなことはない。我々のソフトウエア開発も半年に一度更新するペースになっている。これまで更新サイクルは1年だったが、半年に短縮した。

 例えば米グーグルは、毎時間ごとに新たな機能を追加しているのではないか。もちろん我々はそこまでできないが、2、3カ月に1度の更新頻度はよいターゲットだろう。ソフトの更新頻度を上げて、できるだけ最新製品との機能やクオリティ、パフォーマンスのギャップを少なくしていきたい。

ノキアとして特に力を入れているオープンソースのコミュニティはどこか。

 やはりOpenStackだ。特にコアネットワークの分野では大きな存在となっている。OpenDaylightにも力を入れている。