前回は、ネットワーク管理の自動化が注目されている背景を紹介しました。そして、ネットワーク管理の自動化技術を、自動化の抽象度に応じて「オーケストレーション」「SDN/ネットワーク仮想化」「ネットワーク管理」「機器管理」の四つのレイヤーに分類しました。

 この中で最も多くのネットワークエンジニアが携わるレイヤーであり、自動化の導入が効果的な「機器管理」と「ネットワーク管理」にフォーカスします。今回は、機器管理のうち構築フェーズでの自動化の一つである「Zero Touch Provisioning」(ZTP)を紹介します。

煩雑な初期設定が一切不要に

 もし、あなたがデータセンターのサービスを提供する会社のネットワークエンジニアで、ある朝、上司から、「急なサービス成長に対応するため、明後日までに10台のスイッチを商用環境にセットアップできないか?」と相談を受けたとします。あなたならどうしますか?

 この指示を最優先すれば対応できるかもしれません。しかし実際には、ほかにも業務を抱えているはずです。既存の業務に支障が出ないよう、最小限の工数で素早くインストールする方法を考えなければなりません。そんなとき、ZTPは有効な解決策の一つになります。

 ZTPは、特定の機能やプロトコルを指すのではなく、ネットワーク構築を自動化するワークフロー全体を表す用語です。ZTPでは、初期状態のネットワーク機器をネットワークに接続して電源を入れるだけで、OSのアップデートや必要な設定をネットワーク経由で自動的に行います。

 データセンター内の作業者は、機器の設置とケーブル接続をするだけで、一切の設定作業から解放されます。また、ネットワークオペレーターは機器の設定や状態確認に専念でき、効率的に作業を分担できます。

従来のワークフローとの比較

 ZTPを使用する場合としない場合でどのように機器の設置作業が変わるのか、比較してみましょう。ZTPを用いた場合、作業工程の多くが圧縮され、とてもシンプルになります。

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