通信大手3社の2016年4~12月期連結決算が出そろった。増益幅は大手3社とも15%超と好調。主力の携帯電話事業で通信料収入が拡大し、総務省による端末販売適正化で販売手数料の削減も進んでいる。

 一方、「格安スマホ」に代表されるMVNO(仮想移動体通信事業者)の拡大に伴い、不安な兆候も顕在化してきた。通信業界を専門とする日経コミュニケーションの専門記者が、携帯電話大手3社の決算と、その行く末を分析する。

(進行ならびに構成は加藤 雅浩=日経コミュニケーション編集長)


携帯電話大手3社の2016年4~12月期決算で気になった点は何だろう。

記者A ソフトバンクの「主要回線」が、7万件の純減だったことが印象的ですね。ソフトバンクは従来の契約数とは別に、スマートフォンやタブレット端末、フィーチャーフォンなどで構成する「主要回線」と呼ぶ指標を2015年4~6月期以降に、取り入れています。

ソフトバンクの主要回線の純増数の推移
ソフトバンクの主要回線の純増数の推移
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 通信機能を搭載したフォトフレームなどの“ばらまき”による純増数の拡大路線を改めて、ARPU(契約当たり月間平均収入)の高い主要回線の獲得に注力するようになりました。

 「通信モジュールやPHSの減少で全体の契約数が純減しても主要回線は純増」とアピールしてきたのに、2016年10~12月期は主要回線まで純減してしまいました。大容量プラン「ギガモンスター」を2016年9月に始めた影響でモバイルデータ通信端末とスマートフォンの併用需要が減少したと説明しているけど、実情が気になるところです。

 格安スマホ対抗の「Y!mobile」は好調なので、主力のソフトバンクブランドが苦戦している可能性が高いとみています。