急ピッチで構造改革を進める富士通。デジタルサービスに注力する狙いで、コア事業と非コア事業を選別して切り離しを進めるなど、事業構造にテコ入れを図っている。狙うは、IoT(インターネット・オブ・シングズ)や人工知能(AI)などを使って顧客を支援するデジタル変革で、強力な地位を築くことだ。従来型のSIに長らく適合した従業員、組織、技術基盤を組み替えられるのか。富士通 代表取締役社長の田中達也氏に聞いた。
SIを中心にしたテクノロジーソリューションセグメントに投資を集中しています。
2015年に経営方針を打ち出しました。これは、以前までの当社の事業構造では通用しなくなっている。市場の競争相手には勝っていけない。そう判断したためです。
デジタルトランスフォーメーションの時代が訪れています。あらゆるものがつながるIoTを中心に、市場環境は大きく変化しています。グローバルに競争力のある企業として成長するには、当社がフォーカスする分野をきっちり決めないといけない。そして、その分野に投資を集中させます。
以前の事業構造は、垂直統合が強みでした。当社は、半導体からスーパーコンピュータ(スパコン)まで、ITに関係するあらゆる事業を持っていました。しかしグローバルで全ての事業で勝っていくことはできません。
テクノロジーソリューションセグメント以外の、PC、携帯電話などの「ユビキタスソリューション」、半導体などの「デバイスソリューション」については切り離しを進めているように見えます。
ユビキタスとデバイスは、既に独立会社という形にしています。単独での成長が難しければ、有力なパートナーとの提携や事業統合も視野に入れています。ただ、事業統合などは相手の企業との話し合いで決まることですから、当社だけでは発表できない案件でもあります。
変革で目指す姿を教えてください。
顧客に「やはりこの分野は富士通に任せないと」と言ってもらえるような価値を提供できる企業です。富士通にしかできない個性を出すということです。
当社が一番強みを持っているのは、テクノロジーソリューションです。この事業を基盤に、デジタルサービス事業を育てる。デジタルトランスフォーメーションの潮流において、適した選択だと考えています。