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MITメディアラボとともにスマートフォンと連動する新タイプのカメラ開発に挑んだオリンパス。製品化にメドが立つと、販促にもMITブランドを駆使して先駆的な開発者の関心を集めた。
【パートナー開拓】 MITイベントにブロガー群がる
そして2014年7月、いよいよ国内でオープンプラットフォームカメラを公開した。東京都内でMITメディアラボが開催したイベント「MIT Media Lab@Tokyo 2014」でのことだった。「MIT側から発表の要請を受けて踏み切った」と石井課長は明かすが、これが奏功する。このイベントに参加していた、新しい技術トレンドに対して強い関心を寄せる開発者やブロガーが、このカメラに大いに注目したのだ。
その効果が明らかになったのは4カ月後。2014年11月、オリンパスは自社サイトで、SDKと製品本体の3次元データをサイトで公開し、併せて活用アイデア募集も行った。するとオリンパスのそれまでの実績を大幅に超える120人が応募。そこから30件のアイデアを選び、それぞれ開発に着手。2015年3月の発表会で成果を披露した。
「人型ロボットのPepperにカメラを持たせて、セルフィー(自分撮り写真)を一緒に撮れる」「バズーカ砲の口にカメラを差して撮影する」といったアイデアが形になった。30人はいずれも高い技術を持つ開発者だった。MITのイベントで製品を公開したことで、感度の高い開発者の関心を集め、同じく技術に詳しいブロガーが情報を拡散して関心の輪がさらに広がるという好循環が生まれたのだ。
【拡大】 MIT流活用のため権利関係を整理
2015年3月、製品の正式版、OLYMPUS AIRのネット販売を開始した。石井課長らは、有名プロダクトデザイナーやソニーなどと組み、様々な活用策を提案。ユーザーのアイデア創出を促す取り組みを進める。
ただし、「ユーザーがアプリやアクセサリーを作り出しても、オリンパスの許可がなければ他のユーザーが活用できない」という状況になると、OLYMPUS AIRを活用する幅は広がらない。
そこで、「公開しているSDKやサンプルアプリはオリンパスが著作権を持つが、それらを基にユーザーが開発したアプリは、ネットに公開したり販売したりしてよい」といったルールを明確化した。「社内の知財・法務部門の協力を得て、ユーザーが自由にアイデアを形にして共有できるよう権利関係を整理できた」と、石井課長は振り返る。
ユーザーによって「OLYMPUS AIRとスマホのカメラの2つで同時にシャッターを切って撮影できる」などのアプリが誕生。OLYMPUS AIR本体の3次元データも公開し、ユーザーがAIR向けカメラアクセサリーを独自に作れるよう支援した。「地面すれすれのアングルで撮れるアクセサリー」などが形になり、ネット販売されている。
今後も引き続き社外を巻き込む施策を展開していく。「オープンイノベーションに関する知見がいろいろ得られているので、今後の製品の研究開発に生かしていきたい」と、石井課長は、意気込みを語る。