最近、経営者の口からIoT(インターネット・オブ・シングス)やAI(人工知能)といった言葉が発せられるようになった。これまで「ITは分からない」と言っていた経営者までが、ITに対して強い関心を示す。

 IT部門には「ITベンダーの口車に乗せられて」とうんざりする人もいるようだが、必ずしもそうとは言えない。ビジネスのデジタル化により競争環境が激変するであろうことを、経営者としての”嗅覚”として感じていることにほかならないからだ。

 とはいえ、にわかに経営者から「うちのAI活用はどうなっている」と言われたら、CIO(最高情報責任者)やIT部門の人が「ちょっと待ってください」と言いたくなる気持ちも分かる。もちろん、経営者は何からの問題意識を持って聞いてきているはずなので、それに正対する必要はある。だが、それと同じくらい重要なIT活用面での課題で、歴代の経営者がほとんど気にも留めず先送りしてきたことがあるのだ()。

図●経営者にCIOが言うべき5 つのこと(その2)
図●経営者にCIOが言うべき5 つのこと(その2)

 この特集の第1回で、以前ITは事業部門などビジネス現場の便利ツールだったと述べた。システムを導入することで仕事の効率が上がり、皆が楽になる。だからこそ、事業部門は情報化を歓迎し、IT部門も事業部門から感謝されることで、IT部員たちは仕事にやりがいを感じることができた。経営者も「ITはビジネス現場の便利ツール」と了解していた。だからこそ、経営者はITを分からなくても、大きな問題を感じなかったわけだ。