ソニーのCIO(最高情報責任者)としてIT部門を経営に資する組織へと変革した著者は、多くの企業で弱体化し経営や事業部門から省みられなくなったIT部門の現状に警鐘を鳴らす。ビジネスのデジタル化、つまりデジタルビジネスの成否が企業の将来を決める時代に、IT部門が今のままでは日本企業はグローバル競争で必ず負ける。

 そんな危機感からIT部門の再生・変革に向け、著者の技術者、そしてCIOとしての経験や知見の全てを語り尽くす書籍を出版した。今回の特集では、その書籍の中から「経営者にCIO(あるいはIT部門)が言うべき五つのこと」を紹介する。ITを分からない経営者に喝! (ITpro)


 企業のIT部門は、経営やビジネスのインフラである情報システムを安定運用するために、限られた人員で日々大変な努力をしている。にもかかわらず、社内外から「経営や事業部門のビジネスにIT部門は貢献できていない」といった声が聞こえてくる。特に経営者の無理解は、IT部門にとっては辛いことだと思う。

 長年ソニーのIT部門で働いた私には、そうしたIT部門の皆さんの気持ちは痛いほど分かる。ただ、所与の条件の中で在るべき姿を求め、最大限努力するのがビジネスパーソンの務めだ。言いたいことが山ほどあるのは分かるが、まずは自分たちがやれるべきことをやるべし、と説いてきた。IT部門が経営やビジネスに貢献する頼もしい存在に変われば、社内での評価も一変するからだ。

 だが最近、その考えを改めた。今や企業は、ITを活用してビジネスのイノベーションを図る必要がある。それを推進するには、IT部門だけがどんなに努力しても限界がある。それは、ビジネスのデジタル化、あるいはデジタルビジネスと呼ばれる取り組みであり、ITはビジネスそのものとも言えるようになったからだ。まずは経営者がITを分からないと話にならなくなりつつある。

 それゆえに、CIO(最高情報責任者)やIT部門のマネジャーは、デジタル化を担える組織にIT部門を変革すると共に、経営トップに対してITを深く理解し、経営戦略のど真ん中にITを据えるように進言し、説得する必要がある。幸い経営者自身も、iPhoneの目の覚めるような成功などを目の当たりして、ビジネスにおけるITの重要性やデジタル化の意味を理解しつつある。