エンタープライズITで創造的な変革をもたらした製品・サービスの提供企業50社を表彰する「ミライITアワード 2016」。日経コンピュータが今回創設した表彰制度だ。中でも先進的な1社に贈る総合グランプリには、セコムの防犯用ロボット「セコムドローン」を選出した。開発に当たって陣頭指揮を執った小松崎常夫常務執行役員IS研究所所長に、なぜ斬新かつ大胆な開発が成功したのか、その秘密を聞いた。

(聞き手は高田 学也=日経コンピュータ
 セコムは昨年12月、自律飛行して敷地内を監視する飛行ロボット「セコムドローン」を世界で初めて市場へ投入した。ビルや工場で、不審人物や車をいち早く発見するものだ。侵入を検知すると、監視カメラを搭載したドローン(小型無人機)が現場に急行。不審人物の特徴や車のナンバーを撮影して証拠を押さえる点が新しい。
写真●セコムの小松崎常夫常務執行役員IS研究所所長
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写真●セコムの小松崎常夫常務執行役員IS研究所所長

空から警備するというアイデアはどのように生まれたのでしょうか。

 当社は、かなり前から「空からの警備」について研究開発を進めてきました。小さな変化を迅速に見つけることは警備の基本。言うまでもなく、空から見下ろすことは変化を見つけるのに最適な手法ですから。

 ビルなどの施設を侵入者から守るには、敷地内に固定カメラを設置するのが一般的です。この方法だと、微細な変化を見逃さないようにするには、台数を増やし1台1台の画像解析能力を高め続けていくしかありません。少ない台数で、かつ現在手に入る画像解析テクノロジーで効率よく防御するにはどうすればいいのか――。

 突き詰めて考え出した理想的なアイデアが、自律飛行して現地に急行する飛行体でした。言ってみれば、領空侵犯した敵機に対して戦闘機でスクランブルをかけるイメージです。

 アイデアを思いついたのは早かったのですが、課題もありました。ラジコンヘリを飛ばすなどさまざまなトライアルを行いましたが、セコムが考える理想的なサービスを実現するには研究を始めた当時はまだ技術が揃っていませんでした。