日本の代表的な動画共有サービス「ニコニコ動画」が新機軸を打ち出す。サブカルチャー路線に加え、硬派なドキュメンタリー路線のコンテンツを拡充。企業と組んでのマーケティング支援事業も強化する。ただ、利用者主体という基本は不変。同事業を率いるニワンゴの杉本誠司社長は「ネットかリアルかを問わず対話の場としての熱量を高める」と宣言。YouTubeなど他のサービスと差異化する考えだ。
「ニコニコ動画」を中心とした「niconico」事業の現状をどう総括しますか。
会員数は好調に推移しています。niconicoの有料会員である「プレミアム会員」の数は2015年6月末時点で248万人、前年同月比で20万人近く増えました。
会員の内容は多様化しています。年齢で言えば全体としては20代が圧倒的に多く4割を超えます。一方でイベントの参加者は10代が多い。ネット上で人気が出た「歌ってみた」「踊ってみた」動画の内容をイベント会場で実際に披露するなど、思い思いに楽しんでいます。
インターネットの動画サービスが乱立する中、niconicoの特色をどう打ち出しますか。
利用者同士のコミュニケーションの場としての魅力を、ネットとリアルを組み合わせてトータルコーディネートします。ご存知の通り、niconicoの特徴は利用者が投稿したコメントが動画の上を流れていくことです(画面1)。動画を一方的に配信したり受身で見たりするだけでなく、配信者と視聴者や視聴者同士でリアルタイムのコミュニケーションが成立しているのです。
niconicoは「対話空間」
いわばniconicoは利用者同士の「対話空間」なんです。双方向のコミュニケーションがあるからこそ利用が活発になるし、イベントでも主催する側と来場者が一体になって楽しめる。コンテンツを届ける手段であるビデオ・オンデマンド(VoD)のサービスとは、ここが違います。
YouTubeはどうでしょう。一般利用者が動画を投稿でき、人気の高い投稿者が「YouTuber」としてセミプロ的な活躍を見せています。
利用者からするとYouTubeも一種のVoDサービスと認識されているのではないでしょうか。niconicoは投稿されるコメントが見るたびに変わりますから、同じ動画を繰り返し見る傾向が高いのです。両者の楽しみ方はかなり異なっていると考えています。