育児休業を取得したイクメンSEへのインタビューの3回目には、2度の育休を取ったNEC SI・サービス技術本部 主任の田邊徹さんに登場いただく。全社の開発方法論を整備する田邊さんは2度の育休を取れた要因を「理解ある職場とタイミングのいい仕事の切れ」と話す。半面、田邊さんに勇気づけられ育休を検討するも、1、2カ月間の育休のための引き継ぎの手間と収入が下がることをネックに諦める同僚を何人も見てきた。NECは年10人程度の男性が育休を取得し、その平均期間は1〜2カ月という。

(聞き手は井上 英明=日経コンピュータ


現在のお仕事ぶりを教えてください。

 2004年入社で今年37歳になりました。入社以来、社内標準の開発方法論「SystemDirector Enterprise(SDE)」について開発ツールそのものを“開発”したり方法論を“整備”したり、ツールや方法論を現場のプロジェクトに“展開”する部署に所属しています。仕事上、社内のあらゆるシステムインテグレーション(SI)案件全般を広く見て、失敗や成功を踏まえて品質や生産性を向上させるために方法論やツールに反映させています。裏方ではありますが、どちらかというとありがたがられるだけの仕事ですね。

 もちろん、そのためには適用してもらう難しさもあります。初めてSDEを使うプロジェクトは「そんなの嫌だ」と言われることが多いです。手慣れたやり方を変えなければいけないからです。ですので、現場の案件に入って一緒に進めていくという展開作業が欠かせません。NECは10年前に社内に様々あった方法論をSDEに一本化しました。これを社内に展開し、さらに次の世代に伝承していくため、部署には部署創設以来、長く在籍する人が多いです。まだまだ展開などやることがたくさんあります。

育休を2度取られたそうですが、子どもが生まれて何が最も変わりましたか。

 時間の使い方です。一言でいえば「早く来て早く帰る」です。そして子どものお風呂は私が入れたい、寝かしつけも私がやりたい。朝8時30分には仕事を始め、定時の夜5時15分に退社することを目指しています。

 昔は残業が多かったんですよ。入社してすぐにSDEが立ち上がり、社内への展開をとにかくスピード重視で進めるため、複数の適用案件がありました。入社して3年間ぐらいまではむちゃくちゃな生活でしたね。それを過ぎると方法論やツールもこなれ、適用も波に乗れてきた感があり、残業が減ってきました。

 ちょうどそのころ、2007年に結婚し、2011年11月には第一子を、2014年3月には第二子を授かりました。両方とも男の子で、妻は専業主婦です。

最初の育休はすぐに取られたのですか。

 生後6カ月半の2012年6月から、満1歳になる11月までの5カ月半、育児休職を取りました。休暇は極力消化するタイプだったので、妊娠が分かった時に制度を調べ、「こういう(育休)制度があるのか、取れるものなら取りたいな」と思ってはいましたが、正直、育休が必要かどうかは分からず、踏み切れなかったんです。

 上司は何でも話せる人なので、雑談レベルでは生まれる前から育休のことを話していました。ただ、生後1カ月ぐらいから妻の育児をサポートしたい気持ちが高まり、周りのメンバーにも相談するようになりました。気持ちが固まり、「よし取ろう」と決断したのは生まれて3カ月後ぐらいでした。育休期間を満1歳までとしたのは、1歳までしか育児休業給付金が出ないからでした。

 最終的に上司に告げたのは2012年の2月末です。部署として来年の計画を立てなければならない時期でもあったので。上司は「おぉ、そうか、いいねぇ」という感じで、引きとどめなどは全くなかったですね。むしろ「子どもとたくさん過ごせていいなぁ」とうらやましがられたぐらいです。

寛容な上司の方ですね。

 実は上司は3人のお子さんがいるんです。周りのメンバーもみなお子さんがいて、入学式といった子どものイベントで休むのは当たり前の雰囲気です。とても相談しやすい職場で、恵まれていると思っています。

 2012年12月に復職しました。翌日からびっくりするほどフル稼働で、年末年始は大忙しでした。とはいえ、特殊なイベントやトラブルが無ければ、定時内で仕事が終わるように効率化して「早く帰る」目標は完全に達成できています。部としても複数人で仕事に当たり、「この人しか分からない」を極力無くすような仕事をしています。