前回に引き続き、今回の投稿も大企業におけるR&D(研究開発)がテーマです。今回は、シリコンバレーなど、海外のR&D拠点(イノベーション前哨地)を設ける必要性について語られています。(ITpro)

 このブログは、大企業によるイノベーション・モデルの変化に関するシリーズの第2回で、エバンジェロス・シモウデス氏との共著です。シモウデス氏と私は、「大企業における起業活動の新しいモデル」を書籍にすることを期待して、協力しています。第1回目のブログ「イノベーション前哨地と進化する大企業のR&D」もどうぞご参照ください。

イノベーションとR&D前哨地

 数十年もの間、大企業は、国内に巨大な市場と多くの研究者を持っていたとしても、研究所を本社の外、しかもしばしば海外に設置しました。米IBMの研究所はチューリッヒ、米ゼネラル・モーターズ(GM)の研究所はイスラエル、トヨタは米国、といったのがその例です。

このような遠隔地の研究所によって、大企業には4種類の利点がもたらされます。

・企業は、その地域の法律に準拠することができます――例えば、海外の子会社が、米国にある親会社から製造技術を得て、 海外の顧客に対して技術サービスを提供できます
・企業の製品をその国や地域に適合させ、現地市場に、より浸透できるようになります
・世界規模でのイノベーション・サイクルが可能になり、他国の専門知識と資源が得られます
・世界市場で同時に発売できるような製品の開発が可能になります

 スイスのABBやNovartis、Hoffman-La Roche、オランダのPhilips、スウェーデンのEricssonといった、母国の市場が小規模で、わずかな研究開発資源しかもたない企業は、必要に迫られて、研究開発を海外で行うことになります。

企業別のR&Dと売り上げの国際化比率
企業別のR&Dと売り上げの国際化比率
R&Dの国際化比率が高いほど、売り上げの国際化比率が高い傾向がある(出典:研究開発の国際化を促進する、市場と技術の対比=M von Zedtwitz、Oliver Gassmann共著)