この「極言暴論」で私が展開するIT部門限界説に対して、元ソニーCIO(最高情報責任者)の長谷島眞時氏が真っ向から反論する「 IT部門への“極言暴論”を斬る」は、いよいよ佳境だ。なかなか好評のようだが、今回は連載に直接絡むのはよして、私の主張をこれまでとは違った観点で述べてみる。そうすると長谷島氏との対立点も、より明確になるだろう。

 Twitterなどの読者のコメントを読むと、極言暴論に対する批判で必ず出てくるのは「木村はIT部門ばかりをディスるが、IT部門がそうなったのは経営の責任だろ。なぜ経営者の責任を追及しないのだ」というもの。この点については、全くその通りである。IT業界の問題を書く際には、ITベンダーの経営者を遡上に乗せても、ユーザー企業のIT部門の話の場合、経営者を直接批判していない。

 その理由は簡単だ。極言暴論がITproのコラムだからである。ITproはその名の通り、ITのプロフェッショナルのための媒体。そしてこの極言暴論は、そうしたIT部門やITベンダーのプロフェッショナルたちに「あんたら、それっておかしいだろ」と直接ケンカを売っているのである。一方、ユーザー企業の経営者は直接の読者として想定していないから、ケンカを売りたくても売りようがないわけだ。

 おそらくIT部門の劣化の問題を取り上げて「経営者はバカだ」と書いたら、多くの読者から拍手喝采をもらえるだろう。実際、ITproにもそんな記事は散見する。だが、それはダメIT部門の人たちが自分たちの無気力・怠慢を棚に上げ、本人に聞こえないところで「経営者はバカだ」と言って溜飲を下げているのに等しい。当事者が読まない、聞かないところでの批判は単なる陰口、悪口のたぐいである。

 だが、このスタンスは矛盾をはらむ。長谷島氏の主張はCIOやIT部門自らの努力により改革は可能というものだ。だからITproの読者に向けた直接のメッセージになる。一方、私のIT部門限界説は「IT部門の改革は不可能だから解体再編すべし」というもの。つまり本来なら経営マターである。そこで今回は“読者しばり”を外してストレートに書いてみる。初めて書く“経営者はバカだ”論である。