今、IT業界は空前の人手不足だ。とにかく技術者が足りない。それはSIerや受託ソフトウエア開発会社といったトラディショナルなIT業界だけでなく、ネット企業など今どきのIT業界でも同じ。さらに言えば、システム内製の必要性に目覚めたユーザー企業もIT部門などの要員を増やそうとしている。このチャンスを生かせば、技術者本人がハッピーになれるだけでなく、IT業界の変革も夢でない。

 IT業界の人手不足を示す指標はいろいろと出ているが、例えば転職サービスの「DODA」の転職求人倍率レポートによると、2015年3月の職種別の倍率で「技術系(IT/通信)」が3.26倍に達している。震災復興や東京五輪の関連需要で同じく空前の人手不足と言われている「技術系(建築/土木)」ですら2.10倍だから、ICT関連の技術者にとって転職市場は今、他の職種を圧倒する超売り手市場なのだ。

 そんなわけなので、読者の中にはゴールデンウィーク(GW)期間中に転職について熟考した人も大勢いるだろう。その結果、転職を決意したのなら、私はもろ手を上げて賛成する。それどころか、逡巡している人には思いっきり背中を押したい。特に SIガラパゴスの多重下請け構造の中で不本意な仕事をしている技術者は、大きなお世話かもしれないが、本当に考えたほうがよい。

 私は以前、SIerを頂点とする多重下請け構造は2020年頃に崩壊すると予測した(関連記事: SIerの余命は5年、オオカミは本当にやって来る)。それを単なる妄想と思うかどうかは勝手だが、少なくとも本来のシステムインテグレーションとは似ても似つかぬ、人月商売のSIビジネスがこのまま繁栄することはあり得えず、市場は大きく縮むはずだ。

 その意味では、多数の超大型のシステム開発プロジェクトが重なったうえ、景気回復により全産業で人手不足感が高まっている今が、SIガラパゴスにいる技術者にとって転職のラストチャンスかもしれない。暴論ふうに言えば、あなたが辞めたことで所属していたITベンダーがどうなっても知ったことではないのだ。千載一遇の機会を逃すべきではない。幸運の女神に後ろ髪は無いのだ。