前回の極言暴論で、ユーザー企業のIT部門やシステム子会社、そしてSIerを「オーバーヘッダーズ」と命名した。相当お怒りの読者もいるようだが、私としては、日本企業のシステム開発における多重“丸投げ”構造の当事者を的確に表した言葉だと思っている。そう、日本のIT業界の多重下請け構造は、客側のIT部門から見れば多重丸投げ構造なのだ。

 この多重丸投げ構造の過剰なオーバーヘッドが日本のITをダメにしてきたわけだが、あらゆる産業でビジネスのデジタル化が進む今後は、さらに致命的なことになる。そのあたりの話は前回に書いた(関連記事:IT部門、システム子会社、SIer…「オーバーヘッダーズ」が企業を滅ぼす)。今回はオーバーヘッダーズの中の人、そして中の人にこき使われている下請けITベンダーの人たちの今後を暴論する。

 少し復習すると、オーバーヘッダーズの中の人は主に「管理する」側だ。システム開発などに付随する管理作業、まさにオーバーヘッド業務を担う。もちろん必要最小限のオーバーヘッド業務は必要なのだが、それにしても人が多過ぎる。既存のウォーターフォール型の開発を想定しても、IT部門-システム子会社-SIerの多段階で中の人は皆“プロジェクトの管理者”だったりする。

 では、彼らは実際に何をやっているのかと言えば、客側ならベンダーマネジメントである。だが、このベンダーマネジメント業務は全く無用であるケースが多い。元CIO(最高情報責任者)の人が、あるIT部門で入社2年目の若手の業務がベンダーマネジメントと聞いて腰を抜かすぐらい驚いた、という話をしていたことがある。だが、逆に言うと、その程度の管理業務でしかないわけだ。

 さすがにSIerの中の人については、腰を抜かすぐらい驚くようなことはない。当然、本物のプロジェクトマネジャーはいる。だが、若手は開発プロジェクトの一部分しか“管理”させてもらえないから、全体を仕切る経験を持てず、優秀なプロマネに育たない(関連記事:SIザウルス滅亡近し、巨大化し無能になるITベンダーの末路)。オーバーヘッダーズの中の人は誰もかれも、技術者として危機的状況なのである。