前回の「ひ…1つの組織に2つのスタイル」で、ヒト・モノ・コトなどをすべてデータ化してビジネスに役立てる「デジタル化」を支えていくためには、IT部門に「多様化は必須の条件である」という認識を浸透させることが欠かせないと指摘した長谷島氏。今回からその具体策に踏み込む。

 企業のシステム部門は、これまで主に手掛けてきた基幹系システムに加えて、デジタル化に向けたシステムにも深く関わっていくことが求められる。ここで求められるのは、スピード、イノベーション、不確実性への対応力だ。

 言い換えれば、従来型のIT、すなわち(持続的な改善を目指す)安全で安定したITと、より俊敏で非線形 (ノンリニア) なITという2つの流儀で、エンタープライズITを運営する必要があるということだ。この2つの流儀の開発や運用についての考え方は、相反すると言ってもいいほど異なる。

 ガートナーでは、この2つのシステムを線形システム、非線形システムという言葉で区別している。線形システムとは、基幹系システムなど、ビジネスプロセスをあらかじめ把握できていて、処理がパターン化されているシステムを指す。一方、非線形システムはこれまで前例がないビジネスを対象にしており、処理のパターン化も難しいことが多い。

 まず開発のスタンスが大きく異なる。線形システムでは、リスクを極小化できるようウォーターフォール型で開発を進める。ユーザー部門の担当者を巻き込んで、ビジネスに必要な機能を固めていくことが必要となる。開発作業を依頼する先も、大手を中心としたウォーターフォール型の開発に慣れているITベンダーになる。

 これに対し非線形システムの開発では、新規ビジネスの立ち上げを支えるため、いかに早く開発できるかがポイントとなる。スピードを重視してアジャイル開発を採用し、「失敗してうまくいかなければ次の手を打てばよい」というスタンスでの開発になる。