「Watsonは、日本でも受け入れられている。今後は日本語対応を急ぐ」。日本IBMのマーティン・イェッター社長は2014年11月10日、都内で記者会見を開き、事業戦略説明会でこう強調した(写真1)。三井住友銀行やみずほ銀行が、人工知能を搭載するコンピューターWatsonをコールセンター業務で活用することを表明しており、2015年には実用化する予定である。記者会見には、イェッター社長を含め、米IBM本社のシニア・バイス・プレジデントを務める3人が登壇し、注力3領域の変革を進めていることを強調した。

写真1●日本IBMのマーティン・イェッター社長
写真1●日本IBMのマーティン・イェッター社長
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三つの領域に集中投資

 2014年第3四半期(7~9月)決算で、10四半期連続の減収に沈んだ米IBM。同社はx86サーバーや半導体製造の事業を切り離す一方で、「データ」、「クラウド」、「エンゲージメント(モバイル+ソーシャル)」の3領域に注力する方針を打ち出している(関連記事:60年続けてきた半導体製造を手放すIBM、「Watson」に社運を賭ける)。米IBMの戦略責任者であるケン・M・ケヴェリアンシニア・バイス・プレジデント コーポレート・ストラテジー担当は、「ほとんどの投資を、この3領域に集中させている」と明かす(写真2)。

写真2●米IBMのケン・M・ケヴェリアンシニア・バイス・プレジデント コーポレート・ストラテジー担当
写真2●米IBMのケン・M・ケヴェリアンシニア・バイス・プレジデント コーポレート・ストラテジー担当
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 「データ」領域の中核をなす質問応答システム「Watson」には10億ドルを投資しており、「クラウド」領域では20億ドルをかけてIaaS(インフラストラクチャー・アズ・ア・サービス)である米ソフトレイヤーを買収、2014年末までに世界15カ所にデータセンター(DC)を新設する。「エネルギー供給や復旧力などの観点から東京が最適だ」(イェッター社長)とし、都内に新たなDCを開設する意向を示した。「エンゲージメント」の分野では、米アップルや米ツイッターとの提携を実現させた。

 「注力領域をシフトさせており、その成長率は市場平均を上回る。IBM全体の好転につながるはずだ」と、ケヴェリアンシニア・バイス・プレジデントは語る。